2018年、鉄道の営業力が試される:杉山淳一の「週刊鉄道経済」2018年新春特別編(1/5 ページ)
「企業として、需要があるところに供給する。そういう当たり前のことを、鉄道事業者はやってこなかったのではないか」。つい先日、ある第三セクター鉄道の社長さんに聞いた言葉だ。小林一三イズムが落ち着き、人口が減少傾向にある中で、鉄道の営業努力が試される。2018年は、そんな時代になると思う。
少子高齢化が社会問題として認知され、ずいぶんたった気がする。少子化傾向は国家社会にとって良くない、と感じているけれども、ギュウギュウ詰めの満員電車に乗っていると、人口が減った方が住みやすい世の中になるかもしれないと思う。しかし、地方のガラガラの列車に乗れば、やはり少子化、過疎化は心配だ。電車の混雑率と出生率の相関を調べたら面白そうだ。
少子化と鉄道のビジネスチャンス
少子高齢化が鉄道に与えた影響は何か。最も誤解された事象は、いわゆる通勤ライナー、有料で着席を保証する快速列車だ。当時のマスコミや識者と呼ばれる人々の中には、「少子化で鉄道利用者も減るから、鉄道事業者は客単価を上げたいのだ」「有料座席を増やせば、乗客が少なくても売り上げを確保できる」「だから通勤ライナーは少子化対策である」と連想していった。
そのミスリードが定着しそうになったので、2017年2月に本欄で「通勤ライナーは少子化だから」はウソだと解説した。大手私鉄沿線、いや、関東近郊の鉄道沿線の人口は増えており、減少傾向はずっと先だ。数年先まで、少子化対策よりも乗客増加対策が優先されるべきだ。
ただし、通勤ライナーの登場を「乗客に対する値上げ施策」ではなく「沿線価値向上のため」と捉えれば、遠回しだけど少子化対策と言える。少子化傾向は、時を経て、通学人口の減少、就労人口の減少へと移行していく。それは鉄道沿線の人口減少であり、鉄道利用者の減少につながる。
しかし、人口減少は統計学のように平均的ではない。人気のある路線では、独立したり結婚したりして新居を構える人が増えるだろう。その半面、人気のない路線からは流出していく。現在の少子高齢化は人口集中と過疎化も組み合わさっている。都市に人口が集中し、地方は過疎化していく。それと同じ現象が、関東地方の私鉄沿線でも起きる。人気のある地域に人口が集中し、人気のない地域は過疎化していく。
地域の人気を左右する要素の1つとして、通勤や通学などの交通機関の便利さがある。だから、関東のベッドタウンでは人口の奪い合いが始まっている。鉄道のライバル関係というと、私鉄とJRのような並行している路線の競争があった。しかし、いまやその範囲は路線網レベルまで拡大している。
少子化問題を認識し、魅力ある鉄道路線を整備し、沿線の価値を高めれば、人口と乗客の拡大につながる。少子化は鉄道会社にとって生死を分ける問題であり、早期に認識すればビジネスチャンスでもある。
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