京王電鉄「京王ライナー」増発に“ちょっと心配”:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)
京王電鉄が2月22日にダイヤ改正を実施する。注目は同社初の座席指定列車「京王ライナー」の誕生だ。平日、土休日ともに夜間時間帯を中心に運行する。京王電鉄沿線の価値向上に貢献するけれども、ダイヤを見て少し心配になった。どうか杞憂であってほしい。
新宿駅で乗客が滞留する?
しかし、運行ダイヤを見ると、ちょっと心配な部分がある。このダイヤ設定では新宿駅が混雑しそうだ。ダイヤ全体は発表されていないけれども、報道資料で平日の午後8時台、土休日の午後5時台の例がある。土休日は大きな混雑はなさそうだ。問題は平日だ。午後8時ちょうどに京王ライナー八王子行きが出た後、8時01分発で各駅停車、8時05分発で準特急八王子行き、8時10分発で特急橋本行き……と続く。午後7時台が示されていないけれど、午後6時台は例示されている。現行ダイヤは午後6時台と7時台が同じだから、新ダイヤも午後6時台と7時台を同じと仮定すると、準特急八王子行きは午後7時46分発だ。
いままでは午後8時ちょうどに特急八王子行きがあった。午後7時50分発の10分後だ。しかし、新ダイヤではここに京王ライナーが挟まり、限られた乗客しか乗れない。次の準特急八王子行きは5分後。先発の特急八王子行きの19分後だ。この19分で八王子方面に急ぐ人がどれだけ新宿駅に滞留するだろうか。
午後8時台だけで橋本方面を比較しよう。現行ダイヤでは、午後8時12分に特急橋本行きが発車した後、次の特急橋本行きは8時32分。20分後だ。新ダイヤでは、8時10分に特急橋本行きが発車した後、8時30分に京王ライナー橋本行きが発車する。次の特急橋本行きは8時40分。30分後になる。この10分間の延長で、橋本行き特急に乗る人が、どれだけ新宿駅に滞留するだろうか。
30分も待つくらいなら、特急か準特急の京王八王子行きに乗り、調布で乗り換える人も多いだろう。京王八王子行きが、橋本方面へ行く乗客の難民で混雑するかもしれない。
その失敗を克服した例が京急電鉄のウイング号だった。ウイング号の登場当時、同じ時間帯の快特が減ったため、快特の利用者がウイング号直後の特急に乗ろうとした。今度は特急が大混雑。本来の特急利用者にとっては大迷惑な事態になった。現在、京急電鉄のダイヤを見ると、ウイング号の直後に快特を続行させて、ウイング号に乗らない快特利用者を救済している。
東武東上線のTJライナーも、池袋発車時刻をみると、直後に急行または準急を走らせるパターンがある。小田急のホームウェイも直後に急行を走らせる。小田急の場合は基本的に特急の直後は急行だ。特急のおかげで待たされた急行利用者に便宜を図るダイヤになっている。
こうした先例をみると、京王ライナーの直前直後の特急と運行間隔が気になる。京王ライナーの直後に同じ方面の特急または準特急を走らせた方がいいのではないか。もちろん京王電鉄はそれを承知でダイヤを策定しているはずだから、この心配は杞憂だと思いたい。
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