雪上試乗会で考えるスバルの未来:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)
スバルは、青森市内から八甲田山、十和田湖を経由して安比高原までのコースを走るアドベンチャー試乗会を開催した。日本屈指の過酷な積雪ルートでスバル自慢のAWDを検証してくれというわけだ。
飛ばしてないとダメ
こともあろうに、八甲田の山中でFRのタクシーに先頭を抑えられた。われわれの前にすでに数台が数珠つなぎになっているので大人しくのんびりペースに巻き込まれて走るしかない。しかし時速20キロから40キロ程度の車列の流れに従って走っている間中、ある現象が起き続けた。いわゆるアンダー・オーバーステア。要するに最初にアンダーステアを出し、次に操舵いかんによってオーバーステアに転じる。
元々の速度が極めてゆっくりなので、エンジンブレーキだけで減速し、コーナーの入り口でゆっくりステアリングを切っていく。ターンインは素直でキレイに曲がる。アクセルはパーシャル。つまり減速も加速もしない車速維持状態だ。
コーナーの前半でクルマは自転運動を強めながら公転を開始し、後半はその自転運動を減らしながら公転を継続していく。クルマにとってコーナーリング後半は、前半に比べて楽なところである。不可解なことに、インプレッサは後半の楽な局面に入った途端、徐々にアンダーステアを見せ始める。
前半でステアリングを切り増し、後半は戻していく場面、あるいは戻しのタイミングを計っている場面だ。ここで切り増しを求められるのは運転のセオリーとしてちょっと心外で、イメージとかい離している。この現象は明確に再現性があり、低速のパーシャルでは確実にクセとして出るものだった。
ちなみに、この切り増し要求にオンタイムかつ適量で対応できないとクルマは外にはらんでいく。あるいはアンダーに気付くのが遅れて、慌てて多めにステアリングを切れば、タイヤのショルダーが作った雪壁でフロントタイヤのスラスト抵抗(横滑り抵抗)が急激に増えてフロントにブレーキを掛けた状態になり、リヤタイヤの加重が抜けて後輪が滑り出しスピンモードに入る。こうなるともうカウンターを当てる技量がないとどうにもならない。メカニズム的には恐らくはパウダースノーでのみ発生するのだろう。首都圏のシャーベット状の雪や、踏み固められた硬い圧雪路では雪壁ができないのでスピンには至らないはずだ。
筆者はこのスピンを助手席で体験したが、運転者の操作は厳密に言えばタイミングが遅れたものの、ミスと言うほどではなく、普通のドライバーが普通にやりかねないごく軽微なミスだった。速度が低いだけに危険度は低いのだが、これだけゆっくり走っていてそれはないだろうというのが正直な感想だ。
これが高機動域で起きるのであれば、ドライバーがそんな速度で走るから悪いと言えるのだが、あくびが出るほどゆっくり走っている速度域で起きるのが問題だ。
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