クルマの技術は向上しているのに、子どもの事故が続く背景:スピン経済の歩き方(1/6 ページ)
登下校時に、子どもが巻き込まれる痛ましい事故が続いている。ドライバーの不注意や過失によって引き起こされたものであることは間違いないが、その一方で、筆者の窪田氏は「日本の通学路が抱える問題もある」と指摘する。どういう意味かというと……。
またしても痛ましい事故が起きてしまった。
1月30日、岡山県の県道で5台がからむ衝突事故が発生して、トラックが集団下校中の児童の列に突っ込み、4年生の女児の尊い命が奪われた。その2日後には、大阪府の市道で重機が警備員の制止をふりきって歩道に乗り上げ、聴覚支援学校の生徒や先生をはね、やはり11歳の女児が帰らぬ人となった。
クルマ自体は安全技術が増しているにもかかわらず、登下校中の子どもが犠牲になる事故は後をたたない。昨年10月には、大阪府枚方市で集団登校していた子どもたちの列に、乗用車が突っ込んで6人が重軽傷となっている。免許取り立てのドライバーは「(太陽が)まぶしかった」と述べたという。
2016年10月には、横浜市で集団登校中の子どもの列に軽トラックが突っ込み、小学1年生の児童が亡くなった。同じ月には愛知県一宮市で、下校中の4年男児がトラックにはねられ亡くなった。ドライバーは運転中に「ポケモンGO」をやっていた。さらに、その翌月には千葉県八街市でも集団登校の列にトラックが突っ込んで、児童4人が重軽傷を負っている。
こういう話をすると必ずといっていいほど、「交通事故自体は減少している」「登下校中の事故はマスコミが大きく取り上げるからであって実際はそれほど多くない」的なことを言ってくる人たちが出てくる。
確かに、警察庁のデータをみれば、17年の事故数は47万2069件、負傷者57万9746件と減少していて、死亡者3694人は過去最小だという。年間1万人以上が亡くなって「交通戦争」になんて呼ばれた時代のことを思えば雲泥の差だ。
が、一方で子どもたちの周囲だけはいまだに「交通戦争」がガッツリ続いている。
警察庁が16年までの5年間に、歩行中の交通事故で死傷した人をまとめたところ、7歳をピークにして小学生が多いという傾向があった。年間10万人当たりの死傷者数でみると、全年齢平均が46.8人に対し、7歳は146.4人。なんと3倍以上事故にあっているのだ。
さらに、小学生の5年間の死傷者計2万9317人のなかで事故に遭った状況を分析すると、6001人が下校中、4139人が登校中。つまり、約3分の1が登下校中に起きているのだ。
もちろん、子どもの不注意や交通ルールの理解不足もあるだろう。だが、ここまで露骨に登下校中の子どもたちがバタバタと倒れていく背景には、「日本の通学路」が抱える構造的欠陥も大きい。
12年、京都府亀岡市で登校中の小学生の列に、無免許の18歳が居眠り運転で突っ込み、小学2年生の児童と保護者が亡くなり、児童8人が重軽傷を負う事件があった。これを受けて、文部科学省が全国の通学路を調査したところ、危険性が高いとされた通学路はなんと7万4000カ所もあった。そこで歩道の整備やら信号の設置などの安全対策が行れたものの、16年3月でも5500カ所が手付かずだったという。
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