アルファード/ヴェルファイアの深い悩み:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)
トヨタの中でも屈指の「売れるクルマ」であるアルファード/ヴェルファイアがマイナーチェンジした。その中身はどうなっているのか。実際に乗ってみるとさまざまなことが浮き彫りになってきた。
トヨタ自動車はアルファード/ヴェルファイアのマイナーチェンジを行い、1月8日に発売した。
価格は335.5万円から751万円。立派な高級車の価格であるにもかかわらず、ピークの2015年には国内でアルファード/ヴェルファイアの兄弟車合計で年販10万台超えを達成した。17年実績でも9万台オーバー。合計とはいえその台数はヴィッツに匹敵する。トヨタでも屈指の売れるクルマだ。
マイナーチェンジの中身
マイナーチェンジで最も力が入っているのは予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」の第2世代の初搭載だ。従来トヨタは比較的安価な「Safety Sense C」と上級版の「Safety Sense P」の価格帯ハイロー戦略を取ってきたが、第2世代ではこれを統一し、車両の価格に関係なく同等の安全が確保できることを目指すという。
それは、カメラとレーダーが小型化された恩恵であり、ヴィッツ・クラスであっても取り付けが可能なサイズまでユニットをコンパクト化できたことによる。ただし、現実問題として車両の基礎設計年次によってはセンサーやフィードバック系のチャンネルが違うため、機能のすべてが完全に同等というわけにはいかない。ただ、トヨタの方針としては、それをそろえていく決意なのだと言う。
パワートレインはV6 3.5リッターと、直4 2.5リッターに加え、ハイブリッドという構成になる。乗って見るとやはりV6が良い。ハイブリッドがダメというわけではまったくないが、高級車然とした振る舞いをこのクルマに求めるのであればV6にアドバンテージがある。
他のグレードでも傾向は変わらないが、アルファード/ヴェルファイアは、実は結構なドライバーズカーだ。もちろんトヨタがTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)採用モデルでたびたび言うような「意のままに」というクルマではないが、しずしずと走らせるものとしては、見識の高さを感じるセッティングだし、操舵に対するクルマの動きも悪くない。
四角いミニバンの宿命
丁寧に運転すれば、Gの総量を一定にしたまま加減速から旋回へと滑らかにつなげることができる。初代アルファードの、ステアリングギヤが2割引されているような不感症操舵から思うと隔世の感がある。少々感心してセカンドシートに移った。
ミニバンは皆そうだが、走り出した瞬間から疑問符である。かかとで感じる床板の振動がひどい。のみならずその振動をシートフレームが伝えてシートバックがずっとビリビリと振動している。これよりひどい振動のシートは記憶にある限りクライスラー・ボイジャーだけだ。あれは2列目と3列目のシートを床下に収納するために、床の剛性部材が削られ、折りたたみ機能のためにシートのフレームもぐにゃぐにゃだったので、あまりの振動に背もたれに体を預けていられず、横を向いてドアを背もたれにしたほど酷かった。
さて、それに比べればマシではあるものの、ボイジャーを思い出させた時点でトヨタの負けである。何でこんなことになっているのか? それが今回のテーマである。
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