企業は「クラウドファンディング」をどう活用するべきか:有識者が解説(3/3 ページ)
急激に市場規模が拡大しているクラウドファンディング――。新しい資金調達の手段として注目されているが、企業はこの新しいツールとどのように向き合っていけば良いのだろうか。
クラウドファンディングで成功する秘訣
クラウドファンディングで成功するプロジェクトの特徴として、「プロジェクト開始の数日で目標金額の30%以上の資金を集められていること」が挙げられます。
逆に言うと、数日間で30%以上の資金が集まっていないプロジェクトは拡散力が弱いため、大抵の場合、目標金額に達せず失敗に終わります。
これは、どのプロジェクトでも共通して言えることです。成功するためには自社コミュニティーの人たちに協力してもらいながらSNSでプロジェクトを拡散する必要が出てきます。ですので、自社の人的リソースをリスト化(フォロワーの多い人を集めて、拡散に協力してもらうなど)し、初期段階で30%集められるかどうかを考慮してから、目標金額の設定をすると良いでしょう。
また、「文章を書くのが得意な担当者(または専属ライター)がいる」「動画を作ることができる」という特徴も挙げられます。実際にどれだけ魅力的な商品でも、プロジェクトページの文章が稚拙だと、その魅力を伝えることはできません。上記の特徴に沿った人を集めてプロジェクトチームを編成してから実施するのも成功の秘訣と言えるでしょう。
トラブルに注意
最後に、クラウドファンディングで気を付けてほしいことについて。それは、ずばり「プロジェクトが本当に実現できるものなのかどうか」を確認することです。「詐欺まがいのプロジェクト」と世間から批判を受けないように気を付けなければなりません。
これまでにも、トラブルを起こして企業イメージを悪くしてしまった例はたくさんあります。例えば、クラウドファンディングの「Kickstarter」で約12億円を集めたクーラーボックス「Coolest Cooler」は資金は集まったものの、結局予算が足りず、商品の発送が大幅に遅れたことで、大クレームとなりました。
また、同じく「Kickstarter」で4億円以上を集めた手のひらサイズの小型ドローン「ZANO」でも、同じように資金は集まったものの、開発がうまくいかず、提供期限を過ぎても商品(リターン)が送られてこないということで大きなトラブルになりました。
目標達成後にこのようなトラブルを引き起こさないよう、起案する前に計画的に予算を想定し、実現可能かどうかを考慮して、プロジェクトを進めていく必要があります。
板越ジョージのプロフィール:
クラウドファンディング総合研究所所長。ニューヨーク在住。戦略コンサルタント。博士(学術)1988年に単身渡米。サウスカロライナ大学国際政治学部卒業。中央大学大学院戦略経営研究科修了(MBA)、同大学院総合政策研究科博士後期課程修了(博士:学術)。1995年にNYで創業。アメリカに進出する企業や起業家へ会社設立や資金調達などの支援を行う。日本においてはクラウドファンディングの第一人者として、利用促進のために活動中。クラファンカレッジを設立し、日本全国でクラウドファンディングのセミナーを開催中。書籍
『クラウドファンディングで夢をかなえる本』『日本人のためのクラウドファンディング入門』など。
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