「“表面的な女子っぽさ”の女子向け商品」からの脱却 午後の紅茶×ポッキーの4年間:「ブランドのコラボは何をもたらすか」
「女性向けの商品やサービスをヒットさせたい」――そんな担当者必読の本が「ブランドのコラボは何をもたらすか 午後の紅茶×ポッキーが4年続く理由」。キリンとグリコのコラボプロジェクトから、女子向け商品のマーケティングについて学ぶ。
「女性向けの商品やサービスをヒットさせたい」「自社のブランドをもう一歩進化させたい」――そんな思いを抱く担当者必読の本が出た。「ブランドのコラボは何をもたらすか 午後の紅茶×ポッキーが4年続く理由」(宣伝会議/税別1800円)だ。キリンビバレッジの「午後の紅茶」と江崎グリコの「ポッキー」という、2つのトップブランドのコラボプロジェクトの歩みをまとめている。
コラボプロジェクトは両社の担当者同士が交わした“世間話”から始まった。メインターゲットや市場ポジションといった共通点と、当時掲げていた「ハピネス」というブランドメッセージが重なったことで、プロジェクトは加速。両社から社員を集め、ターゲット世代である20〜30代の女性だけでチームを作った。
ところでみなさんは、「20代女性向けの商品」と聞いたときに、どんなイメージを思い浮かべるだろうか。もしここで「ピンク」とか「ハート」とかのワードしか出てこないようなら、その商品はきっとうまくいかないだろう。コラボチームのメンバーは本書でこのように語っている。
「女子向け商品というとその多くがとりあえずピンク色で、キラキラで、デコラティブで、ハートがついていて、お花柄があしらわれていて、アルファベットでなんだか書いてある、どこか似たようなものばかりではないだろうか。(中略)コンビニやスーパーを見渡すと、そのような“表面的な女子っぽさ”だけに走ったものが、あまりに多いような気がするのだ」
チームメンバーは、両社で積み重ねていたマーケティングノウハウやロジックという“左脳”と、自身の直感で分かる「これが欲しい!」という“右脳”を行ったり来たりしながら、女性のインサイト(消費活動や購買意欲を促すスイッチ)を深掘りしていった。議論は打ち合わせ時間だけではなく、「LINE」のグループでまで繰り広げられたという。そこで見つかったインサイトと、「食べ合わせると新しい味覚が生まれる」アイデアをもとに、コラボ商品は作り上げられていった。
2商品を並べると王子様とお姫様が手を取り合うデザインが完成するというコンセプトが消費者に受け、コラボ第1弾は予想を上回る結果となり、2年目が決定。コンセプトやデザインを進化させ、「リア充女子」と「オタク女子」という2つの層に向けた広告コミュニケーションが奏功したこともあり、2年目は第1弾の2倍の売り上げを記録した。
本書が面白いのは、失敗も紹介されていること。「昨年超え」を気負っていた3年目に“最高の出来”として提案した「おっさん女子」のアイデアは全ボツに。「女子に任せておけば、女子向けの商品は大丈夫でしょ」という考えが甘いことも教えてくれる。消費者に寄り添うことを忘れれば、どんなに性別と年齢という共通点があったとしても、消費者が欲しい商品からは離れてしまう。成功と失敗を乗り越えたキリンとグリコの4年間は、課題意識をもっているブランド担当者の助けになるはずだ。
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