介護施設が「プロレス」「お寺」とコラボする理由:“介護版ビットバレー”をつくりたい(1/3 ページ)
介護業界の課題解決に向けて、新しい切り口で挑んでいる介護業界の“アクションリーダ―”斉藤正行氏。彼がこれまで取り組んできたこと、そしてこれから仕掛けようしている「お寺×介護」とは?
介護業界が「プロレス」「ギャル雑誌」「お寺」とコラボ?
介護業界の人手不足問題の解決に向けて、今までにない切り口で挑んでいる「アクションリーダ―」がいる。日本介護ベンチャー協会で代表理事を務める斉藤正行氏だ。
斉藤氏は異業種とのコラボ企画を通じて、介護の“負のイメージを変える”活動に奔走。介護業界で働きたいという人材を増やすために、さまざまな施策を実践してきた。そして現在は、「介護×お寺」という新たなコンセプトのプロジェクトを全国で展開しようとしている。一体、どんな取り組みなのか。
斉藤氏のこれまでの活動と、これから仕掛ける施策について取材した。
「天職」との出会い
斉藤氏は大学卒業後、コンサルティング会社に就職し、外食ベンチャーのIPOを支援する業務を3年間務めた。その後、介護事業を手掛ける会社に転職。ただ、介護の仕事に興味があったわけではないという。
「最初から介護事業に興味があったわけではありません。IPOを目指す成長企業で働くことに興味があり、それがたまたま介護施設の運営を手掛ける会社だったのです。介護保険制度が始まったばかりの当時はまだブルーオーシャン。会社は急成長しました」
斉藤氏は店舗拡大に貢献し、2年後には取締役に昇進。事業内容よりもビジネス面で魅力を感じて始めた仕事だったが、このときに「これは天職だ」と思ったそうだ。
「『おかげ様で幸せです』『この施設のおかげで最後に親孝行ができました』と感謝される。今までやってきた仕事で言われた『ありがとう』とは重みが全く違いました。本当にやりがいを感じられる仕事だと思ったのです」
一方で、介護業界が置かれている状況の厳しさも現場で痛感することになった。当時、斎藤氏は介護職員を採用するために多額の広告費を投入したが、それでも全く応募がこなかった施設もあった。
「高齢者の人口は増える一方で、労働人口は減り続ける。このままでは社会インフラを維持できなくなる。次第に危機感を持つようになりました」
斉藤氏は、人手不足を解消させるためには、世間が介護業界に持っているいわゆる「3K」(きつい、汚い、危険)という負のイメージを変えることが重要だと考えた。
「よく、給料を上げれば人材は集まるという議論になりがちですが、それだけでは無理でしょう。例えば、看護師の仕事は介護と比べれば収入も高く、他業界と比較しても決して低い年収ではありません。それでも人手不足は深刻です。理由は仕事の過酷さだったり、『大変そう』というネガティブなイメージが先行しているからではないでしょうか」
「どんな仕事にも、ポジティブな面とネガティブな面があります。しかし、介護の場合はネガティブな面ばかりフォーカスされがちです。ここが最大の問題だと思いました」
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