介護施設が「プロレス」「お寺」とコラボする理由:“介護版ビットバレー”をつくりたい(3/3 ページ)
介護業界の課題解決に向けて、新しい切り口で挑んでいる介護業界の“アクションリーダ―”斉藤正行氏。彼がこれまで取り組んできたこと、そしてこれから仕掛けようしている「お寺×介護」とは?
介護とお寺の融合
異業種とのコラボによって課題解決に挑む斉藤氏が、次に仕掛けるコラボ企画が「介護×お寺」プロジェクトである。全日本仏教青年会と連携し、全国にあるお寺と介護施設を融合させていくという。
介護施設の需要は今後も増え続けるため、建設を進めていく必要があるが、土地をどう確保するかが課題になっている。一方で、お寺は広い土地を所有しており、未活用の土地も存在する。その空いている土地に介護施設を建設するのだ。
「お寺はもともと『地域の福祉』という要素が強く、介護と相性が良い。介護施設を併設することで、空いてる土地の有効活用にもなる。また施設は『お寺のブランド』を生かした集客効果も期待できるようになる。お寺側も新たな収益を得ることができ、檀家、後継者を確保することにもつながる」
単に併設するだけでなく、お寺の特徴を最大限に有効活用する。例えば、トレーニングメニューとして利用者が写経をしたり、座禅を組んだりといった具合だ。比較的体が丈夫な利用者にはお寺の掃除を手伝ってもらうことで、自立支援介護を実践していくという。第1号施設は今春に開設する予定だ。
また、このプロジェクトは国内のみの展開にとどまらない。政府は今後、日本の介護技術やシステムをアジア諸国に輸出する官民連携のプロジェクト「アジア健康構想」を推進していくとしている。斉藤氏は「お寺×介護」の自立支援介護を日本式の介護として体系化することで、アジア諸国に横展開し、大きなビジネスに成長させたいと考えている。市場が大きくなれば、介護分野で起業したい人を増やすことにもつながっていく。
「ケアプログラム(トレーニングメニュー)の詳細を詰めるのはこれからです。お寺の特徴を生かした自立支援介護のシステムを構築します。日本式の介護システムとしてアジアにも広げていきたい」
斎藤氏は今後も異業種とのコラボレーションを加速させていく考えだ。「介護の市場が大きくなれば当然、その周辺産業にも大きなビジネスチャンスが生まれる。あらゆる産業や技術が介護領域へ参入してくることになるでしょう」(斎藤氏)
「異業種とのコラボはもちろんですが、今後は介護関連事業を展開する企業に特化したファンドで、資金面でもビジネスを支援していきます。事業を支援することで、“介護の産業化”を促進させて介護版ビットバレーを実現し、業界のイメージを変えていきたいです」
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