「甘さへの罪悪感」超えられるか コカ・コーラの新提案「紅茶花伝 クラフティー」:復調の紅茶市場に
コカ・コーラが新ブランド「紅茶花伝 クラフティー 贅沢しぼりオレンジティー」を発売。復調の紅茶市場を背景に、“新しい紅茶”を提案する。
コカ・コーラが紅茶に力を入れる。コカ・コーラシステムは、3月12日に「紅茶花伝 クラフティー 贅沢(ぜいたく)しぼりオレンジティー」を発売する。「紅茶に100%果汁を注ぐ」というコンセプトの新しいブランドで、果実飲料「ミニッツメイド」の果汁を9%使用し、仕上げにはちみつを加えた点が特徴だ。紅茶とオレンジジュースの中間のようなさわやかな味わいを実現した。
プラスに転じた紅茶市場
新ブランドの背景にあるのは、紅茶市場の盛り上がりだ。近年下落傾向が続いていたが、2015年に下げ止まり、16〜17年は微増に転じた。
日本コカ・コーラ マーケティング本部の山腰欣吾さんによると「微増に転じたのは紅茶カテゴリーにとっていい傾向。カフェなどにも紅茶メニューが増えていて、追い風になっている」という。
ただ、活況の主要因はさまざまな新商品や新提案があったミルクティー。フルーツ系紅茶やストレート紅茶は微減している。
日本コカ・コーラは17年に主力商品の「紅茶花伝 ロイヤルミルクティー」をリニューアルし、好調なミルクティーで弾みをつけた。そして今年、ミルクティー以外のカテゴリーにも力を入れ、新ブランド「クラフティー」を立ち上げた。メインターゲットは20代後半〜40代の男女。もともとの紅茶飲用層である870万人だけではなく、「甘い飲み物を求める」層の1900万人が手に取ることも狙う。
「クラフティー」のポイントは「甘さへの罪悪感」という消費者心理だ。10代などの若い世代は甘さに抵抗はないが、年齢を経るごとに甘さに罪悪感を抱くようになり、果汁などの自然素材を使った「ほどよい甘さ」が支持される一方、既存の紅茶飲料は飲用率が低下する傾向があったという。そこで、「果汁とはちみつを使った甘み」で、“紅茶離れ”をしていた消費者に向けてアピールする。
また、「ミニッツメイド」の果汁を使用することで、プレミアム家電、クラフトビール、高級路線のコーヒーなどで見られる「日常の中でもこだわりがあるものを選びたい」といったニーズにも応えたという。
「オレンジ味」ではなく「新しい紅茶」を
山腰さんは「日本コカ・コーラこれまで紅茶のトレンドの盛り上がりをうまく結び付けた提案ができていなかった。クラフティーという提案で、単なる『紅茶花伝のオレンジ味だ』ではなく、『新しい紅茶だ』と消費者に思ってもらいたい」と話す。果汁と紅茶の風味を両立するために、いくつも試作を重ねたという。
“新しい紅茶”の認知を広げるため、テレビCMに加え、デジタル・交通広告、店頭のサンプリングなども展開する。
将来のラインアップ拡充は「まずはオレンジティーを世の中に定着させたい。シリーズ化は検討しているが、市場で味の入れ替えのようになるのは本意ではない。可能性をしっかりと考えていく」と慎重だ。
「これまで日本コカ・コーラは紅茶カテゴリーにあまり投資できていなかったが、真剣に取り組んでいきたいと思っている。他社の紅茶商品からスイッチするというよりは、新しいお客さまに飲んでもらえたら。紅茶市場の拡大につなげたい」(山腰さん)
関連記事
- 苦戦が予想される「ダイエットコーク」に、立ちはだかる過去の壁
1982年に発売されたダイエットコークが岐路に立たされている。米国での炭酸飲料全体の売り上げが落ち込んでいることから大幅なリニューアルを行う予定だが、効果はどのくらいあるのだろうか。最大の壁は……。 - 「ウィルキンソン」がバカ売れしている本当の理由
「ウィルキンソン」が売れている。躍進のきっかけはハイボールブーム。割り材としての需要が増えたことでブランド認知が上がったそうだが、大事な要素が欠けているのではないだろうか。どういうことかというと……。 - 「ドミノ・ピザ」が再び急成長しているワケ
「ドミノ・ピザ」が再び急成長している。宅配ピザ業界で首位に立つ「ピザーラ」を追い抜く勢いだが、なぜ好調なのだろうか。その理由は……。 - コカ・コーラ、日本市場で「缶酎ハイ」発売へ 初のアルコール飲料
米コカ・コーラが日本市場で缶酎ハイを発売する。ノンアルコール引力に注力してきたコカ・コーラが新たな領域へ。 - 「いろはす」ブランドが支持されるワケ
11月28日に新商品「い・ろ・は・す なし」を発売し、ますますラインアップを拡大する「いろはす」ブランド。ミネラルウオーター市場をけん引し、日本コカ・コーラの他ブランドのマーケティングにも生かされる“強さ”の秘密はなんだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.