後発の「ゆで太郎」がそば業界首位になった理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)
「挽きたて」「打ちたて」「茹でたて」のそばを提供して急激に店舗数を増やしているのがゆで太郎だ。今回は、後発ながら富士そばや小諸そばを追い抜く原動力となった同社のこだわりと戦略を紹介する。
丸亀製麺やスシローとの共通点
現在のゆで太郎が出店しているのは、首都圏1都3県、茨城県、群馬県、北海道、福島県、宮城県、長野県、静岡県、富山県、福岡県で、順次エリア拡大中である。
ゆで太郎の主たる顧客は「働くお父さん」なので、郊外なら産業道路や幹線道路沿い、都心部ならオフィス街に出店している。郊外店には休日にファミリー層が来るので、さらに売り上げが伸びるメリットがある。
「町のそば屋がよく売れないと言われるけど、おいしくないから行かないのではない。1杯で800〜900円というのは日常食としては今や高い。量も少ない。500〜600円くらいでないとお客様は『高い』と感じるのではないでしょうか。営業時間も午前11時〜午後2時までやって、休憩を挟んで午後5時〜午後8時まででは短すぎます」と、池田社長はそば業界が「価格が高すぎる」「ボリュームが足りない」「営業時間が短い」という理由で顧客を取り逃がしていると残念がる。
丸亀製麺はセルフうどんを自家製麺することで、讃岐うどんを食べたことがない地域にも普及して大ブレイクを果たした。あきんどスシローは寿司職人の創業者がもっと安く寿司を提供できないかと回転寿司に進出して、これも大成功している。
ゆで太郎はそば職人がもっと安く本格的なそばを提供できないかと考案し、自家製麺・セルフの形態で伸びている。日本人が親しんでいるそばを商材としているだけに、丸亀製麺やスシローと同様、大ブレイクするポテンシャルを秘めていると言えよう。
ただし、このまま新規出店を続けていくには課題もある。1点目は外食産業を悩ます人手不足の問題だ。2点目は確実な集客が見込めるショッピングセンターのフードコートが開拓できていないことだ。フードコートを訪れる家族連れや女性客に受け入れられるには現在のメニューでは派手さに欠ける。鴨南蛮そばやにしんそばといった非日常感のあるメニューの開発が望まれるかもしれない。
ゆで太郎システムの幹部は「ほっかほっか亭」にてFCビジネスの酸いも甘いも体験し、FCオーナーをむげに見捨てるようなことだけはしないと誓い合っているそうだ。いくつかの課題はあるが、ハートウォーミングな姿勢がある限り、本部の求心力で300店、500店と店舗を伸ばしていけるだろう。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
関連記事
- 「551蓬莱の豚まん」が新幹線で食べられなくなる日
新大阪駅で「551蓬莱の豚まん」を買ったことがある人も多いのでは。新幹線の車内でビールと豚まんを食した人もいるだろうが、こうした行為が禁止されるかもしれない。どういうことかというと……。 - 「養老乃瀧」で“締めの牛丼”が売れている
養老乃瀧が、かつて販売していた「養老牛丼」がレギュラーメニューとして復活。締めのメニューとして、ダントツの人気商品となっている。古くからのファンや、一度は食べてみたいと思っている人が想像以上に多かったという。 - 「はなまるうどん」は「吉野家」を超えるかもしれない
「はなまるうどん」の業績が絶好調だ。今回は「丸亀製麺」の787店に次いで、うどん業界第2位につける「はなまるうどん」が2年連続の赤字という苦境を克服して、再び成長軌道に乗った理由を解説する。 - ココイチが急速に“マンガ喫茶化”しているワケ
カレー専門店の圧倒的シェアを誇り、独走を続けるCoCo壱番屋(ココイチ)。近年、そんなココイチが急速に“マンガ喫茶化”しているのをご存じだろうか……。 - てんやが天丼チェーンとして“唯一”全国展開できた理由
圧倒的なコストパフォーマンスの高さで人気を博しているてんや――。なぜ天丼チェーンとして“唯一”全国展開できたのか、そのビジネスモデルを解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.