行列はもういらない――苦境「クリスピー・クリーム」、新社長の改革:3年連続で最終赤字(3/3 ページ)
2006年に日本市場参入後、一大ブームを巻き起こした「クリスピー・クリーム・ドーナツ」。だが、当初の勢いを継続できず、業績は最終赤字が続いている。若月貴子社長が取材に応じ、苦戦の要因と今後の巻き返し戦略を語った。
iPadで接客を改善
スピード重視だった接客の質を高めるため、若月社長は従業員向けの研修方法も改善。iPadを導入し、新人スタッフが動画で質の高い接客方法を学ぶスタイルに切り替えている。
「従来は、各店舗の店長が個人の裁量で社員教育を施していたため、店舗間で接客の質にばらつきがあったほか、正しい接客方法を見直す機会もなかった」
「これを防ぐため、iPadの動画で正しいマナーを学べる仕組みを取り入れ、誰もが好きな時に勉強できるようにした。動画は一律で同じものを配信し、会社としてのスタンダードを打ち出している。派手さはない取り組みだが、実際に新入社員の早期戦力化と顧客満足度向上につながっており、手応えを感じている」
効果は数字にも現れており、17年度は参入後初めて、既存店の年間売上高が前年度を上回る見込みという。
「朝食」スタートで幅を広げる
大手コンビニチェーン各社がドーナツ販売に参入し、競合のミスタードーナツがドーナツ以外の軽食メニューに注力するなど、国内市場は変化が続いている。
そんな中、KKDは旗艦店限定の新メニューとして、ドーナツとベーコンを組み合わせたモーニングセット(税込520〜580円)などを15日から発売。メニューの幅を広げつつも、ドーナツの販売にこだわっていく。
若月社長は「当社はあくまで“ドーナツ屋さん”。市場で大きいパイを取ろうと思っておらず、小さなチェーンだからこそできることをやっていきたい」と話す。
新メニューは、販売動向を踏まえて他店舗に拡大する予定。顧客が“朝食にドーナツを食べる”習慣作りに取り組んでいく。
若月社長は「一連の施策によって業績を立て直したいが、黒字転換を焦っているわけではない。当社は上場企業ではなく、ステークホルダーはそう多くない。コスト削減などによって好決算を捻出する必要もないため、まずは同じ失敗を繰り返さないことを目指して基盤固めを進めたい」と力を込めた。
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