シリコンバレーで発表された宇宙ホテルの不動産事業とは?:宇宙ビジネスの新潮流(1/2 ページ)
米国シリコンバレーで宇宙ビジネスカンファレンス「SPACE 2.0」が開かれた。ここで今回初めて発表されたのが、米Orion Spanによる商業宇宙ステーション構想だ。一体どのようなものなのだろうか。
米ベンチャー企業が商業宇宙ホテル構想を発表
4月5日、米国カリフォルニア州のシリコンバレーで開催された宇宙ビジネスカンファレンス「SPACE 2.0」に参加してきた。同カンファレンスは参加者100人弱と、規模こそ小さいが事業モデルなど実利的な議論が多いのが特徴であり、また新たなプレイヤーの登壇があるため、市場の最新動向を探れる場と言えるだろう。
今回初めて発表されたのが、米Orion Spanによる商業宇宙ステーション構想だ。同社は2017年に起業したベンチャーであり、IT分野での起業経験をもつフランク・バンガー氏がCEOを務めている。CTO(最高技術責任者)はNASA(米航空宇宙局)のジョンソン宇宙センターで有人宇宙船業務に10年以上携わっていた。現在従業員は6人で、これまで2人のエンジェル投資家から資金調達を行なっている。
同社では「Aurora Station」という独自開発モジュールを高度320キロメートルの地球低軌道に打ち上げる計画で、技術的な詳細は明らかにされていないが、モジュールの大きさは全長13.3メートル、全幅4.3メートル、与圧容積160立方メートル、2人のクルーを含めて6人が収容可能で、地球とも高速インターネットでつながるという。同モジュールは90分で地球を1周する予定だ。
宇宙へ行く準備期間を3カ月に短縮
Aurora Stationで提供されるサービスは3つだ。1つ目はいわゆる宇宙ホテル事業であり、12日間の滞在を950万ドルで提供するという。
方法論は明らかにされていないが、宇宙に行く前にかかる準備期間を従来の24カ月から 3カ月に短縮することを掲げている。同社の公式TwitterによるとSpace 2.0での構想発表後、72時間で4カ月分の予約が既に入ったとのことだ。
2つ目は「Space as a Service」と同社が呼んでいるサービスだ。昨今、国際宇宙ステーションにおいて微小重力環境下で実験したり、軌道上での部品製造を目指したりする企業が注目を集めているが、同社もこうした企業に対して「Pay as you go(使用に応じた支払い)」でモジュールを提供するサービスを実施する。
3つ目が分譲販売だ。モジュールごとの販売、リース、住居としての提供など、まさに宇宙の不動産ビジネスだ。
今後の計画では、21年終わりごろにAurora Stationを低軌道に打ち上げて、22年初めまでに宇宙旅行者を滞在させる予定だが、現時点ではモジュールの製造拠点がまだないことをCEOも認めており、資金調達も今後具体的に検討していくため、コンセプト先行とも言える。スケジュール通りに進むかは不透明だ。
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