ロボットが宇宙空間で衛星を組み立て、修理する時代が来た:宇宙ビジネスの新潮流(1/2 ページ)
昨今、宇宙空間において衛星などの宇宙構造物を組み立て、点検、修理するサービスが始まりつつある。その最前線を紹介する。
昨今、ロボットを活用した工場の自動化などが注目を浴びているが、宇宙業界では宇宙空間において衛星などの宇宙構造物を組み立て、点検、修理するサービスが始まりつつある。今回はその最前線を紹介したい。
宇宙空間で衛星を点検・修理・組み立て
一般的に衛星などの宇宙構造物は地上で組み立てが行われ、ロケットで宇宙空間へと輸送して運用されている。他方で故障が起きるとその修理は困難を極める。また、大型衛星を打ち上げるためには大型ロケットが必要となり、輸送コストもかかる、宇宙飛行士が関わる場合にはその安全面に問題があるなど課題は多い。
しかしながら、ロボット技術を活用して、宇宙空間において衛星などの宇宙構造物の点検や修理を行い、寿命延長や機能強化を実現したり、あるいは宇宙空間で組み立てを行うことで、ロケットでは輸送が困難な大型構造物を建設できたりという技術的なブレークスルーが起きつつあるのだ。
注目を集める取り組みが、NASA(米航空宇宙局)が民間企業と共同で2年間行なってきた「In-space Robotic Manufacturing and Assembly」プロジェクトだ。同プロジェクトでは宇宙空間上での巨大構造物の製造、組み立て、修理を可能にする画期的な技術を、将来の軌道上実証を見据えて、まずは地上で実証することが目的となっており、これまで3社が参加してきた。
宇宙空間において3Dプリンタで部品を作る
1社目がベンチャー企業の米Made In Spaceだ。カリフォルニア州シリコンバレーにあるNASAエームズ研究所に拠点を構える同社は、国際宇宙ステーション用に3Dプリンタを製造し、人類史上初めて宇宙空間での3Dプリンティングに成功した企業として有名だ。
商業的な宇宙利用時代を切り開くための製造技術革新に挑んできた同社が現在進めているのが「Archinaut」と名付けられた、人工衛星や宇宙船などの大型構造物を宇宙空間上で組み上げるコンセプトであり、日本でも3Dプリンタの登場とともに話題になっているAdditive Manufacturing(付加製造)手法を用いたものだ。
宇宙空間で3Dプリンタが部品を製造、それをロボットアームで組み上げて構造物を作っていく。これまで行われた地上実証では、宇宙空間の環境に耐えられる3Dプリンタの設計と製造をMade In Spaceが行い、製造された部品を組み立てるためのロボットアームは米Oceaneering Space Systems(OSS)、システム全体は航空宇宙大手の米Northrop Grummanが担当している。
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