1.2兆円産業の倍増図る日本の宇宙ビジョンとは?:宇宙ビジネスの新潮流(1/3 ページ)
政府の宇宙政策委員会 宇宙産業振興小委員会において取りまとめられた「宇宙産業ビジョン2030」。ここから日本の宇宙産業が目指すべき方向性を考えてみたい。
日本政府の宇宙政策委員会 宇宙産業振興小委員会において、5月12日に「宇宙産業ビジョン2030」の取りまとめが行われ、現在パブリックコメントの募集が行われている。筆者自身も委員として議論に参加してきた。今回はその内容とともに、日本の宇宙産業が目指すべき方向性についてお伝えしたい。
産官学の有識者がほぼ毎月議論
宇宙産業ビジョン2030は、内閣府宇宙開発戦略推進事務局が主催する有識者会合である宇宙産業振興小委員会の中で、約1年にわたり12回の議論が重ねられてきたものだ。同委員会は宇宙民生利用部会および宇宙産業・科学技術基盤部会の下に、宇宙産業ビジョンを検討する目的で、2016年に立ち上がったものである。
昨年は「宇宙二法」が制定して、今後民間企業が宇宙ビジネスを行っていく上での制度的担保がなされたことは記憶に新しい。大きな一歩であるが、ある意味で入口とも言える。米国の例を見ても、1980年代からの法整備だけでなく、多様な商業宇宙政策が行われてきている。産業振興の観点では政策も重要であることは間違いなく、その指針となり得るのが宇宙産業ビジョンなのだ。
委員は日本総合研究所の高橋進理事長を座長として、大手航空宇宙側はJAXAの松浦直人氏、三菱重工の阿部直彦氏、三菱電機の小山浩氏、スカパーJSATの小山公貴氏、ベンチャー側はアストロスケールの岡田光信氏、キヤノン電子の酒匂信匡氏、グローバル・ブレインの青木英剛氏、大学・有識者側は京都大学の山川宏氏、慶應義塾大学の白坂成功氏、遠藤典子氏、北海道大学の鈴木一人氏、IT業界の第一人者である夏野剛氏、そして筆者の計14人だ。
宇宙産業は第4次産業革命を推進させる“駆動力”
ビジョンの前提となる時代背景として、「宇宙産業の世界的なパラダイムチェンジ」というキーワードとともに、「宇宙分野とIT・ビッグデータを結節するイノベーションの進展」「コスト低下による宇宙利用ユーザーの広がり」「民の大幅活用(宇宙活動の商業化)とそれに伴う変化の加速化」などが記載されている。本コラムで宇宙ビジネスの新潮流と題してお伝えしてきているように、今、世界の宇宙産業では多様な変革の波が同時多発的に起きている。
こうした背景を踏まえて、掲げられている全体方向性のキーポイントは、「宇宙産業は第4次産業革命を推進させる駆動力。他産業の生産性向上に加えて、新たに成長産業を創出するフロンティア」「宇宙技術の革新とビッグデータ・AI・IoTによるイノベーションの結合」「民間の役割拡大を通じ、宇宙利用産業も含めた宇宙産業全体の市場規模(現在1.2兆円)の2030年代早期倍増を目指す」であろう。
一般的には遠く感じることもある宇宙産業を、他産業の生産性向上や成長産業を生み出すためのイネーブラーとして位置付けたことは特徴的だ。世界の宇宙産業でも米SpaceXのイーロン・マスク氏が火星などの深宇宙へと人類の文明圏を進めているほか、低軌道通信衛星によるインターネットインフラ構築を目指す米OneWebのように宇宙産業が地上のあらゆる産業とつながる中で成長、発展していく方向性も存在する。
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