1.2兆円産業の倍増図る日本の宇宙ビジョンとは?:宇宙ビジネスの新潮流(2/3 ページ)
政府の宇宙政策委員会 宇宙産業振興小委員会において取りまとめられた「宇宙産業ビジョン2030」。ここから日本の宇宙産業が目指すべき方向性を考えてみたい。
政府衛星データのオープン&フリー、小型ロケットの環境整備
こうした大方針の下に、宇宙利用産業、宇宙機器産業、海外展開、新たな宇宙ビジネスそれぞれにおいて課題認識、対応策が示されているという構成だ。利用産業では、政府衛星データのオープン&フリーの推進、モデル実証事業の推進が掲げられている。
特に前者は、世界的には米国NOAA(海洋大気庁)の事例のように、政府衛星データのオープン&フリー化およびその先の衛星データ利活用コミュニティー形成が進む。今後の具体的な議論が重要だ。
機器産業では、「継続的な衛星開発(シリーズ化)」「新型基幹ロケットの開発」「部品・コンポーネント技術戦略」「調達制度の改善」とともに、「小型ロケット打ち上げのための国内射場の整備推進等」が掲げられた。本分野はSpaceXなどが進める大型ロケットとは異なる宇宙へのアクセス革命として、世界的に注目を集めており、ロケットベンチャーの米Rocket Labは5月21日以降に初のテスト打ち上げを予定している。日本では今年1月にJAXAが世界最小級の「SS520」4号機の打ち上げ実験を行った。残念ながら途中で中止となったが、大きな可能性のある取組みだ。
宇宙ベンチャーの支援拡大
39ページにわたる産業ビジョン本文の中に、「ベンチャー」という言葉が41回も出てくる。産業発展のための宇宙ベンチャーに対する期待が高いことの表れだろう。日本では現在約20の宇宙ベンチャーが存在しており、エッジの効いた技術やユニークなビジネスモデルを持っているが、数を増やしていくことが大きな課題だ。アイデア発掘を目的とした施策として、内閣府とJAXAおよび民間企業4社(ANAホールディングス、大林組、三井物産、スカパーJSAT)が主催するビジネスアイデアコンテスト「S-Booster」が立ち上がっている。
また、リスクマネーの強化も掲げられた。過去2年にわたり日本の宇宙ベンチャーは累計80億円ほどを調達してきたが、世界全体では過去10年で1兆円を超えるリスクマネー流入が起きており、昨年末に通信大手ソフトバンクがOneWebに10億ドルを出資するなど加速している。こうした中、リスクマネー流入量を増やすべくDBJ(日本政策投資銀行)、INCJ(産業革新機構)などの政府系金融機関や官民ファンドの参画も促し、民間ベンチャーキャピタルや事業者の宇宙分野向けのリスクマネー供給が拡大する環境整備を行うことが明記された。
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