日本の宇宙ビジネス 16年はどこまで進んだ?:宇宙ビジネスの新潮流(1/3 ページ)
世界レベルで宇宙ビジネスが盛り上がる中、2016年は日本も大きく前進した年だった。どのようなことがあったのか、この1年を振り返ってみたい。
年末差し迫る中、12月19日に通信大手のソフトバンクが衛星インターネットベンチャーの米OneWebに10億ドル(約1180億円)を出資することで合意したと発表した。昨今はニュースや記事でも「宇宙」というキーワードを目にすることが増えたが、2016年は日本の宇宙ビジネスが大きく前進した年だ。その1年を振り返りたい。
国内初の宇宙活動法が制定
まず何よりも大きなマイルストーンは、11月の「宇宙活動法」と「衛星リモートセンシング法」の成立だ。前者は人工衛星などの打ち上げと人工衛星の管理について、後者は衛星に搭載したセンサーによって取得されるデータの取り扱いに関する法律だ。
日本では、これまで宇宙航空研究開発機構(JAXA)を中心とした宇宙開発が中心であったが、世界各国が宇宙産業育成のしのぎを削る中、今後は民間企業による宇宙ビジネスの可能性が高まっている。
そうした民間宇宙ビジネスを行っていく上で、制度的整備がなされたことは大きな一歩だ。例えば、人工衛星打ち上げに関する政府補償制度の導入など、事業リスクを下げることで、新たな民間企業の参入を促すことが期待される。他方で、将来の宇宙産業発展のためにはまだ入り口の段階とも言える。
カリスマ経営者、イーロン・マスク率いる米SpaceXの活躍(関連記事)に代表されるように、民間宇宙ビジネスで先行する米国で、初めて宇宙活動法が整備されたのは1984年。その後は試行錯誤の歴史だ。大きな変化点は2000年代に入り、スペースシャトル退役後の国際宇宙ステーションへの物資輸送を商業化したこと、2010年にオバマ政権が掲げた国家宇宙政策で民間宇宙ビジネスを奨励・振興し、要求を満たす場合は民間のサービスを使用することが掲げられたことだ。
日本でも、現在内閣府において議論されている宇宙産業ビジョン(仮称)など、今後の具体的な政策のあり方が鍵になってくる。さらに、米国やルクセンブルクが先行している宇宙資源開発に関しても、今年は参議院内閣委員会で議論がなされ、政府として国際動向把握や必要な措置を検討することになるなど、前進があった1年だった。
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