欧州の小国・ルクセンブルクが宇宙関係者から熱視線を集める理由:宇宙ビジネスの新潮流(1/3 ページ)
ドイツやフランスに挟まれた小さな国、ルクセンブルクが今、世界の宇宙ビジネスの中で注目を集めている。そのわけとは?
皆さんは「ルクセンブルク」という国に対してどのようなイメージをお持ちだろうか?
西ヨーロッパに位置し、ドイツ、フランス、ベルギーなどと隣接する同国は、面積が神奈川県よりわずかに大きい程度で、人口は約50万人にすぎない。しかし今、この小国が宇宙産業で注目を集めているのだ。
世界最大級の衛星通信企業であるSESが本社を構えることに加えて、今年2月にはルクセンブルク政府が宇宙資源探査に関する野心的なプログラムを発表した。さらに5月には政府やESA(欧州宇宙機関)の後援を受けて、世界規模の新宇宙カンファレンスも立ち上がるのである。なぜここまで盛り上がっているのだろうか。
「ファーストムーバ―」こそがルクセンブルクの生きる道
ルクセンブルクの人口の45%は外国人移住者だ。産業としての歴史は、1840年代に南部で鉄鉱石が発見されたことにさかのぼる。その後、1950年代には鉄鋼業で成長し、1970年代まで経済の主柱となった。2002年には企業合併による欧アルセロールが誕生。2006年にはミタルと合併して、世界最大の鉄鋼メーカーである欧アルセロール・ミタルが設立された。
他方で、1970年代の石油危機を経て、1980年代以降は積極的に産業を多角化し、情報通信技術などへ投資。この産業政策の一環として、後述する衛星通信企業、SESが誕生した。金融セクターも鉄鋼業の発展とともに1960年代から発達しており、1980年代には投資ファンドの拠点として成長、今日においても米国に次いで世界第2位の規模を誇る投資ファンドセンターとなっている。
このように、時代に合せて積極的に産業ポートフォリオを入れ替えてきているルクセンブルクだが、ルクセンブルク経済通商省東京貿易投資事務所の松野エグゼクティブ・ディレクターによると、「ファーストムーバ―アドバンテージ(市場にいち早く参入して得られる利益など)を獲ることが、ルクセンブルクの産業戦略です」と同国の経済戦略を語る。
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