創業から12年、ヴァージンが目指す宇宙旅行はいつ実現するのか?:宇宙ビジネスの新潮流(1/2 ページ)
宇宙旅行サービスの実現に取り組む米Virgin Galacticは、2年前に大事故を起こした影響で将来計画が頓挫。それでも再び立ち上がり前進を始めたのだ。
宇宙旅行の実現をビジョンとして掲げ、華々しい注目を集めてきた米Virgin Galactic。2014年の試験飛行中に死亡事故が起きてしまったことで、計画は大きく頓挫(とんざ)し、表舞台からも消えた同社だったが、その後も不屈の精神で開発を続けて、再び帰ってきたのだ。
今回は、そんなVirgin Galacticのあくなき挑戦のストーリーを紹介したい。
2014年の事故で失速
Virgin Galacticは英Virgin groupの創業者であるリチャード・ブランソン氏が2004年に創業した宇宙ベンチャー企業だ。
同じ年に米XPRIZE財団が主催する宇宙旅行のための宇宙船開発コンテスト「Ansari XPRIZE」(賞金:1000万ドル)が行われたのだが、その優勝チームである米Scaled Compositesから技術供与を受けて宇宙船「スペースシップ2」の開発を始めたのが、Virgin Galacticの創業の起源である。
当初の計画では、2015年には宇宙旅行事業を始めるべくスペースシップ2の開発を進めて、55回におよぶ試験飛行を行った。さらに、2008年には世界初の商業宇宙港「スペースポート・アメリカ」(ニューメキシコ)の開港にも関与し、最初のテナントとして加わるなど、さまざまな活動をしてきた。
しかしながら2014年10月、試験飛行中に副操縦士の誤操作などにより墜落死亡事故が発生。このことで計画は大きく頓挫した上に、米運輸安全委員会からも「誤操作による事故を防ぐ措置が十分でなかった」と指摘を受けるなど、大々的に報道ニュースが流れたことを記憶している人も多いだろう。
後継機を開発、ジェフ・ベゾス率いる宇宙ベンチャーと競う
しかしながら、ここで歩みを止めるVirgin Galacticではなかった。
同社はその後も改良を続けて、事故から約16カ月後の今年2月にはスペースシップ2の2号機を初公開した。同機体は英国の物理学者、スティーブン・ホーキング博士により「Virgin Spaceship Unity」と命名された。
同機は操縦士2人と乗客6人が搭乗できる有翼の宇宙船で、母機となる航空機「ホワイトナイト2」に持ち上げられて上昇、空中分離後にエンジンを噴射して、高度100キロメートル超の宇宙飛行を目指すという。
今月9日には、初の飛行試験を米モハベ空港で実施。母機に取り付けられたまま、離陸から着陸までの約3時間強、最高高度1万5000メートルの飛行を行った。今回取得した各種データの分析を行った上で、次フェーズの飛行試験に移行するとしているが、現時点で商業サービスの開始時期は明確にされていない。
最大のライバルは、この連載でも取り上げたことのある米Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏率いる宇宙ベンチャー・米Blue Originだ。同社は再利用ロケットの「NewShepard」を開発中で、Virgin Galacticと同じく高度100キロメートルまでの宇宙旅行実現を目指している。現在のプランでは、2017年にはテスト飛行士を、2018年には最初の顧客飛行士を送り込むと言われている。
関連記事
- 「数百万人が宇宙で暮らす世に」――Amazon・ベゾスCEOがコロラドで語った未来とは?
先ごろ開催された全米最大規模の宇宙カンファレンス「Space Symposium」にて、米Amazonのジェフ・ベゾスCEOが宇宙ビジネスに関する将来ビジョンを語った。実に壮大だがリアリティある内容だったのだ。 - ド派手な「火星探査」や「再利用ロケット」の裏でばく進するSpaceXのビジネス
米SpaceXは2018年に火星無人探査を行うこと、計画が順調に進んだ場合に、早ければ2024年に火星に有人宇宙船を送り込むことを発表した。再利用ロケットなど派手なプロジェクトが目立つが、ビジネス面でも着実な進ちょくを見せている。 - 米政府機関が注力するハリケーン進路予測、その精度やいかに?
自然災害はやっかいだ。そんな中、米国ではハリケーンによる被害軽減などのために気象関連のビッグデータを活用できないかという点に、大いに関心が高まっている。 - 「地球外生命体」と「火星移住」を研究する日本人を知ってますか?
人類は火星に移住できるのか? 地球の外にも生命体は存在するのか? そんな夢のあるテーマについて、日米を行き来しながら研究する一人の日本人がいるのをご存じだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.