創業から12年、ヴァージンが目指す宇宙旅行はいつ実現するのか?:宇宙ビジネスの新潮流(2/2 ページ)
宇宙旅行サービスの実現に取り組む米Virgin Galacticは、2年前に大事故を起こした影響で将来計画が頓挫。それでも再び立ち上がり前進を始めたのだ。
空中発射ロケットで衛星を打ち上げる
Virgin Galacticは宇宙旅行だけでなく、小型衛星の打ち上げサービスも目指しており、空中発射ロケット「Launcher One」の開発を進めている。母機となる航空機にロケットを搭載して離陸、その後ロケットを分離、自由落下しながら第1段に点火して衛星を地球低軌道に投入する仕組みだ。この仕組みを使えば地上で点火するロケットよりもさまざまな射場で打ち上げられるという利点がある。
母機にはホワイトナイト2が利用される予定だったが、昨年末にグループ会社の英Virgin Atlantic航空が運用していたボーイング747-400型機「Cosmic Girl」に切り替えることが発表された。同機体の搭載能力や航続距離などが母機には適しているという。現在、テキサス州にある施設で改修作業が行われているところだ。
数億ドルの契約、ライバルも多数存在
同社の発表によると、既に数億ドルの打ち上げ契約が結ばれているという。例えば、650機以上の小型衛星を活用して地球規模の衛星インターネット網構築を目指す米OneWebは、Virgin Galacticと39機の衛星打ち上げを契約している(なお、OnWebは欧Arianespaceとも約30回の打ち上げ契約を行っている)。
今月中旬には、英Sky and Space Globalから4回の小型衛星打ち上げも受注した。同社は将来的に150〜200機の超小型衛星による通信システムを目指している。この4回の打ち上げには複数の超小型衛星が同時搭載される予定だ。
Launcher One自体は現在サブシステムと主要コンポーネントのハードウェア試験を実施しており、最初の打ち上げは2018年と発表されている。
この分野にもライバルが存在する。従来、小型衛星は大型衛星との相乗りで打ち上げることも多く、打ち上げ時期や投入軌道が選びにくいという課題があった。そこで小型衛星専用の打ち上げロケットの開発が進められており、米Rocket Labや米Fireflyなど多くの企業がしのぎを削っているのだ。
不屈の精神で宇宙ベンチャー市場の最前線に戻ってきたVirgin Galactic。宇宙旅行サービスの早期実現など、今後の飛躍に大いに期待したい。
著者プロフィール
石田 真康(MASAYASU ISHIDA)
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル
ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、10年超のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。民間宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE2015」企画委員会代表。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。主要メディアへの執筆のほか、講演・セミナー多数。
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