「アイコスの受動喫煙被害はない」――フィリップモリスが発表のワケ:臨床試験結果を公表(1/2 ページ)
実生活に近い環境下で加熱式たばこ「IQOS」を使用しても非喫煙者への受動喫煙被害はほぼない――とフィリップ モリス ジャパンが発表。レストランでアイコスを使用しながら飲食する試験などを行ったが、大気中の有害物質の濃度は平常時とほぼ変わらず。非喫煙者の体内からも、こうした物質はほぼ検出されなかったとしている。
実生活に近い環境下で加熱式たばこ「IQOS(アイコス)」を使用しても、非喫煙者への受動喫煙被害はほとんどない――フィリップ モリス ジャパンは4月24日に都内で会見を開き、こんな臨床試験結果を発表した。
試験では、レストランで被験者がアイコスを使用しながら飲食したが、大気中に含まれる有害物質の濃度は通常時とほぼ変わらなかったという。同席した非喫煙者の体内からも、こうした物質はほぼ検出されなかったとしている。
親会社である米Philip Morris International(PMI)はこれまで約3000億円を投じて多岐にわたる臨床試験を実施。アイコスが発する有害物質は紙巻きたばこよりも約90%少ないといった結果を発表してきた。
ただ過去の試験は、人がいない部屋など管理された環境下で実施しており、日常生活に近い状況での有害物質の量や受動喫煙の被害について結論は出ていなかった。レストランで実施する今回の試験には、アイコスの安全性に関する根拠をより明確にする狙いがあるという。
試験の結果は?
試験は昨年11月〜12月にかけて都内で実施。被験者は、非喫煙者、喫煙者(紙巻きたばこ)、喫煙者(アイコス)の3属性で計約400人。
体内・室内の変化を調査するため、まずは被験者全員にニコチン製品を使用せずに飲食させ、尿サンプルを取得。大気中の成分も測定した。次に、アイコスユーザーの一部のみ同器具による喫煙を許可(紙巻きたばこの使用は不可)し、被験者全員が「エアロゾル」と呼ぶアイコスの蒸気に暴露した状態で飲食させた。その上で、尿サンプルの取得と屋内空気環境の測定も再度実施した。
その結果、非喫煙者の尿1グラム中に占めるニコチンの割合は、蒸気への暴露前は平均約0.04ミリグラム、暴露後は同約0.07ミリグラムと少数。喫煙者群の尿中濃度(暴露前:約4ミリグラム、暴露後:約8ミリグラム)の約100分の1程度だった。
発がん性物質「たばこ特異的ニトロソアミン(TSNAs)」はどちらの段階においても、全ての被験者から検出されなかった。
大気中のニコチン濃度の最大値は、暴露前は平均0.03マイクログラム/立方メートル、暴露後は平均1.5マイクログラム/立方メートル。米労働安全衛生局(OSHA)のガイドラインで示された安全基準(500マイクログラム/立方メートル)を大きく下回った。
大気中のTSNAs濃度はいずれも検出限界を下回る濃度だったほか、粒子状物質(PM1、PM2.5)の濃度も暴露前後で大きな変化はなかった。
「学会発表も行いたい」
こうした結果を踏まえ、PMIサイエンス&イノベーション ディレクターのパトリック・ピカベット氏は「アイコスの周囲の方への悪影響は認められなかった」と強調。「分析を深め、学会誌への論文投稿や学会発表も行いたい」と意欲を見せた。
政府は3月に、公共の場での禁煙を義務付ける「受動喫煙防止法案」を閣議決定し、今国会での成立を目指している。同法案では、加熱式たばこと紙巻きたばこに同程度の規制を設ける方針だが、フィリップ モリス ジャパンの井上哲副社長は「加熱式たばこは、紙巻きたばことは違うルールを設けてほしい」との見解を示した。
一方、試験を監修した東京慈恵会医科大学の大木隆生医師は「結果の良しあしについての論評は控えるが、こうした根拠がより多く蓄積されることで、社会における良い判断材料になる」と話すにとどまった。
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