残業削減のためにまた会議? トップの意味不明な指示を生む“罠”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/5 ページ)
残業削減を唱えながら会議が増える……。トップの意味不明な指示に困っていませんか? 彼らは自分の考えが正しいと信じ、現場の問題に向き合うつもりはありません。そんなとき、私たちができることは何でしょうか?
自説を裏付ける部分だけを信じる
当時、米国では死刑制度の賛否が盛んに議論されていました。そこで、実験では死刑制度に反対か賛成かの確固たる意見を持った人を被験者として募集。
最初に、被験者の意見を確認するために「死刑制度は犯罪を減らす効果があるか?」と聞き、「イエス」「ノー」で答えてもらいました(半分がイエス)。
その後、「死刑制度は犯罪を減らす効果がある」と結論付けた研究レポートと、「死刑制度に犯罪を減らす効果はない」と結論付けたもう1つの研究レポートを読むように指示しました。
そして、「このレポートは信頼できるか?」という内容の評価と、「死刑制度への意見が変わったか?」を答えてもらったのです。
“ここ”が実験の肝!
実はここで使われたレポートは本物ではなく、心理学者が、結論以外は1つのものを鏡に映して2つにしたような証拠を作って書いたものでした(被験者には知らされていません)。
普通に考えれば、被験者は「このレポートはおかしい。結局、同じ事を言ってるじゃないか」と 気付くはずです。
ところが、です。なんと被験者たちは全く異なる反応をしました。
彼らは「自分の意見と同じレポート」を評価し、自分の意見を裏付ける証拠だけを抜き取り、「ほらね。私の考えは論理的に正しい」と見解をより強固にしたのです。どんなに実験の実施者である研究者が、「それは間違ってますよ!」とフィードバックしても、自分の意見を変えません。
間違いを指摘された6割以上の被験者たちが、「私は間違っていない。このレポートは私の意見の適切さを示している」と、自分の正しさを証明する文章を探し続け、「ホラ、ここにこんな風に書かれているじゃないか!」と自らを正当化したのです(ダン・ガードナー著『専門家の予測はサルにも劣る』より)。
これが「確証バイアス」です。自分の意見を支持するものを受け入れ、反するものは目に入らない。人間とは、実に勝手な生き物なのです。
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