サービス残業、2000年比で「70時間」減る 人手不足で待遇改善:大和総研調査
2017年に行われたサービス残業は平均1人当たり195.7時間で、00年の266.1時間から70.4時間減った――大和総研がこんな調査結果を明らかにした。同社の廣野洋太研究員に、その要因を聞いた。
企業が残業代を支払わない「サービス残業」は、長期的にみると減っている――大和総研がこんな調査結果を明らかにした。2017年に行われたサービス残業は平均1人当たり195.7時間で、00年の266.1時間から70.4時間(26.4%)減ったという。
大和総研の廣野洋太研究員は「企業の人手不足が続いており、待遇を改善しないと人材が集まらなくなったため」と減少の要因を分析する。
サービス残業時間の推移については「00年代前半は年間230〜260時間と長かったが、その後減少トレンドに転じ、14年以降は年間200時間を下回っている」(廣野研究員)と説明する。
建設業・不動産業は“サビ残”大幅減 金融業は増加
業種別の集計を始めた12年のデータと比較すると、5年間で最もサービス残業が減っていたのは建設業で、17年は12年比55.2時間減の107.4時間だった。不動産業も同49.6時間減の93.7時間という結果だった。
一方、宿泊・飲食業は同6.3時間減の335.0時間と減少幅が小さかった。金融業は同5.2時間増の229.3時間と、サービス残業時間が増加に転じていた。
こうした結果について、廣野研究員は「建設業・不動産業は特に人手不足感が強く、企業が人材確保の必要性を強く実感したため改善に転じた。一方、宿泊・飲食業は24時間体制で営業するケースが多いため、業態上サービス残業を減らしづらいと考えられる」と分析する。
「金融業は人手不足に陥っている企業がそもそも少ないため、企業側が業態改善の必要に迫られていない可能性がある」(同)とみている。
今後については「ビジネス界では人手不足が当分続くため、全体でのサービス残業の減少はこれからも続くだろう」(同)と予測している。
調査は、労働者と一般企業の双方を対象に実施。労働者と企業が答えた労働時間の差を「サービス残業時間」と仮定して推計した。
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