賛否両論の丸紅「社内副業」義務化 人事部長に真意を聞いてみた:狙いは「働き方改革」ではない(4/4 ページ)
大手総合商社の丸紅による「社内副業義務化」報道が議論を呼んでいる。丸紅の鹿島浩二人事部長に真意を聞いた。
当面の課題は「イノベーションの推進」
上杉: 当社では、上記のような「仕掛け」をベースに、既存の枠組みを超えるイノベーションを加速させることを推進している。18年4月からは、イノベーションの推進を担う責任者「CDIO(チーフ・デジタル・イノベーションオフィサー)」と、「デジタル・イノベーション部」を新設した。海外も含めれば約30人の人員を充てている。
時代の大きな転換点の中で、従来とは異なる枠組みで、事業を成長させていくことが求められている。そのためには、世の中の変化に応じて、我々自身も絶え間なく変わり続ける必要があるが、変わるための材料は我々の中にもあると考えている。
幅広い分野で事業を手がける総合商社の強みは、国内外を問わず、あらゆる産業との関わりを有していることだ。それらを生かし、既存の産業とデジタルを掛け合わせることで、イノベーションを生み出すきっかけをつくることを目指している。そのためには、いかに自分たちの商品を売るかという従来型の発想から脱却し、顧客視点で物事を捉えることが必要となる。
――デジタル人材をどのように活用していくのか。
上杉: 技術力を持った人材を、中途採用で募集している。また、テクノロジーに精通したエンジニアやデータサイエンティストの重要性については言うまでもないが、加えて言うならば、テクノロジーを実際のビジネスに適用できる能力を期待している。
目まぐるしく変化する世の中においては、これまで以上にデジタルを重視した取り組みが求められる。そのような時代を生き抜くためには、現在の総合商社のビジネスモデルに安住せず、柔軟な発想で物事を捉えることが重要だ。今回の取り組みについても、そうした危機意識が背景にある。
鹿島: 今回の新制度をきっかけに、社員一人一人が今まで以上に新しいことにチャレンジできるような企業文化を作りたい。これは人事部だけでできることではなく、全社一丸となって取り組んでいきたいと考えている。
著者プロフィール
勝木健太(かつき・けんた)
株式会社And Technologies代表取締役。1986年生まれ。幼少期7年間をシンガポールで過ごす。京都大学工学部電気電子工学科を卒業後、新卒で三菱UFJ銀行に入行。4年間の勤務後、PwCコンサルティング/有限責任監査法人トーマツを経て、フリーランスの経営コンサルタントとして独立。約1年間にわたり、大手消費財メーカー向けの新規事業/デジタルマーケティング関連プロジェクトに参画した後、大手企業のデジタル変革に向けた事業戦略の策定・実行支援に取り組むべく、株式会社And Technologiesを創業。人生100年時代のキャリア形成を考えるメディア「FIND CAREERS」を起点として、「転職Z」「英会話教室Z」「プログラミング教室Z」等の複数の情報サイトを運営。執筆協力実績として、『未来市場 2019-2028(日経BP社)』『ブロックチェーン・レボリューション(ダイヤモンド社)』等がある。
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