ソフトバンクの営業増益に貢献 設立1年「10兆円ファンド」の現在:最終は減益も孫社長は自信(1/2 ページ)
ソフトバンクグループの2018年3月期の連結決算は営業増益・最終減益だった。営業増益には10兆円規模の投資ファンド「SoftBank Vision Fund」が大きく貢献した。会見で孫正義社長が、同ファンドの現状と今後の展望を説明した。
ソフトバンクグループ(SBG)がテクノロジー分野に投資する10兆円規模の投資ファンド「SoftBank Vision Fund(SVF)」を立ち上げてから約1年が経過した。設立後は半導体大手の米NVIDIAなど多岐にわたる企業への投資活動を展開。孫正義社長は5月9日に開いた決算会見で「想像以上に良い結果が出ており、日を追うごとに自信を深めている」と話す。
SBGが同日発表した2018年3月期の連結決算は、売上高が9兆1588億円(2.9%増)、営業利益が1兆3038億円(27.1%増)、最終利益は1兆390億円(27.2%減)だった。NVIDIA株などが大きく上昇するなどし、SVFが3030億円の事業利益を生み出したことが営業増益に貢献した。
最終減益となった要因は、前期に中国EC(インターネット通販)大手Alibaba Group Holdingの株式とフィンランドのスマホ向けゲーム会社Supercellを売却した一時益の反動。Alibaba関連のデリバティブ損失約6300億円を計上したことも響いた。
“ヤフー方式”で成果出す
孫社長によると、SVFの投資先の中ではワークスペース運営の米WeWorkが急激に伸び、ファンドの好調をけん引しているという。Weworkは17年7月にSBGとの合弁で日本法人の「WeWork Japan」を設立し、国内にワークスペースをオープンしている。ワークスペースの契約状況も上々という。
孫社長はこうした「米国で成果を上げている企業を日本に上陸させ、ジョイントベンチャー(JV)を生み出す」という取り組みを継続して行う方針だ。
「米Yahoo!と手を組んで日本のヤフーを生み出し、本家を超える企業価値を築いたのと同じ手法をSVFでも用い、最先端のビジネスモデルを日本に持ち込む。現在は農業ベンチャーの米Plenty、ロボット会社の米Boston Dynamicsなどが準備を進めている」(孫社長)
インドのEC企業Paytm、同じくホテル運営のOYO Rooms、独オンライン自動車ディーラーのAUTO1 Group――といった投資先のビジネスも好調に推移しているという。
Didi、Uberは上場も視野
SVFに出資するサウジアラビア政府系ファンドの投資先との競合を避けるため、SVFの兄弟ファンド「Delta Fund」から出資しているライドシェア大手の中国滴滴出行(Didi Chuxing)や米Uber Technologiesは「近い将来の上場を予定している」(孫社長)という。
一方、投資によって市場価値を高めた企業の売却も進めている。孫社長は9日、17年8月に約25億ドル(約2700億円)を出資したインドのEC起業Flipkartの株式をスーパーマーケット世界最大手の米Walmartに売却し、約15億ドル(約1600億円)の売却益を得たことを明らかにした。
孫社長は「SVFは、SBGが300年成長し続けるための“群戦略”の根幹。今後もさらに成長させていく」と力を込めた。
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