トップアスリートに学ぶ、ビジネス集中力アップ法:5月病を吹き飛ばせ(2/2 ページ)
ゴールデンウィークが明けてから約1週間経つが、まだ仕事モードに入れないといったビジネスパーソンもいるのではないだろうか。集中力の高め方などについてトップアスリートに学ぶことは多い。
強い心の作り方
常に勝負の世界に身を置いているアスリートにとって、いかに強い心を持てるかということも大変重要です。そうした強い心を持つ選手に共通するのは「受け入れる力」が備わっていることです。どんな問題が発生しても、それにこだわらず、起きたことは起きたこととして事実を受け入れる。
当たり前のようですが、これが難しいのです。普通の人は、アクシデントに見舞われたら、「なぜこんな大事なときに」と愚痴を言ったり、「あのときこうしていれば」と後悔したりします。しまいには「こんな状況だからダメなんだ」と言いわけする人も少なくないでしょう。
トップアスリートの場合、こうしたネガティブな考え方はいっさいしません。それを実感したのが、女子ソフトボールのエース投手、上野由岐子選手の立ち振る舞いです。
2004年のアテネオリンピックのとき、上野選手は選手村に入ると高熱を出してしまいました。夕食も食べられない状態で、コンディションは最悪。とても投げられる状態ではない中、一次リーグ最終戦の中国戦に出場しました。ところが、ふたを開けると、オリンピック史上初の完全試合を達成したのです。
不運は続きます。準決勝で再び対戦することになった中国との試合当日の朝に、利き腕の右腕をハチに刺されたのです。普通ならばここまでアクシデントが続くと心は折れるものですが、上野選手はそんなことにも動じず、見事なピッチングで中国戦に勝利したのです。直前のトラブルやコンディション不良にもめげず、心を乱さずに試合に集中できる、上野選手のメンタリティーにとても感動しました。
「受け入れる」ということは、起きてしまったことは振り返らず、前を向くということです。トップアスリートたちは「自分でコントロールできること」と「自分ではコントロールできないこと」の区別が明確なのが特徴です。自分が悔やんだり、考えてもどうにもならないこと、すなわち自分ではコントロールできないことは受け入れ、もうそこに思考を向けません。自分がコントロールできることに集中し、「やれることをやろう」「ベストを尽くそう」と前を向く。だから動じないのです。(談)
小松ゆたか(こまつ・ゆたか)
1961年、長野県生まれ。医学博士。信州大学医学部医学科卒業後、日本赤十字社医療センター、東京大学医学部附属病院、国立スポーツ科学センターなどで内科医、スポーツ・ドクターとして活躍。アトランタ(野球)、シドニー(ソフトボール)、アテネ(ソフトボール)、北京(野球)、ロンドン(本部ドクター)と5回のオリンピックにチームドクター、日本選手団本部ドクターとして帯同。第1回・2回ワールドベースボールクラシック(WBC)でもチームドクターを務めた。近著に『スポーツの現場ではたらく』(イースト・プレス)。
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