セブンの「時差通勤制度」に見る、働き方改革の“限界”:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
セブン&アイ・ホールディングスが時差通勤制度を導入する。評価すべき取り組みだが、一方で、一律の時間枠で社員を拘束する点においては、何も変わっていないと解釈することもできる。同社の取り組みが現実的なものであるが故に、多様な働き方を実現することの難しさが浮き彫りになっている。
セブン&アイ・ホールディングスが、働き方改革の一環として時差通勤制度を導入する。始業時間を3つの中から自由に選べるようにすることで、多様なワークスタイルに対応するという。
日本企業の勤務体系が硬直化しているのは事実であり、できるところから改善していく同社の取り組みは評価してよいだろう。だが一方で、一律の時間枠で社員を拘束するという点においては、何も変わっていないと解釈することもできる。同社の取り組みが現実的なものであるが故に、多様な働き方を実現することの難しさが浮き彫りになっている。
3つのパターンから選択できる就業時間
セブン&アイ・ホールディングスは3月1日から、約1万人のフルタイム社員を対象に、時差通勤制度を導入する。1日の労働時間は変わらないが、一律で午前9時となっている始業時間について、8時、9時、10時の3つから選べるようにする。
当初はセブン&アイ・ホールディング本社の社員900人を対象とし、4月以降はセブン-イレブン・ジャパンの社員9000人にも適用する。イトーヨーカ堂などグループ各社への拡大は今後、検討するという。
同社では、共働き世帯の増加など社会環境の変化に対応し、柔軟な働き方を実現するために制度を導入したと説明している。これまでは「午前9時始業、午後5時30分終業」で統一されていたが、今後は「午前8時始業、午後4時30分終業」の社員と「通常時間帯勤務」の社員、そして「午前10時始業、午後6時30分終業」の社員が混在することになる。
この制度のポイントは、1週間分の勤務予定を事前に申請する必要があることと、勤務時間帯について選択制になっていることの2つである。
時差通勤に事前申請が必要となると、出勤時間の調整は計画的なものにならざるを得ない。制度の詳細は不明だが、前日の就寝時間が遅かったので、10時出社するといった柔軟な対応は難しそうだ。
今回の制度は、保育園の送り迎えなど、スケジュールに沿った時差出勤を想定していることが分かる。いわゆる裁量労働的な概念は入っていないと考えた方がよいだろう。
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