セブンの「時差通勤制度」に見る、働き方改革の“限界”:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
セブン&アイ・ホールディングスが時差通勤制度を導入する。評価すべき取り組みだが、一方で、一律の時間枠で社員を拘束する点においては、何も変わっていないと解釈することもできる。同社の取り組みが現実的なものであるが故に、多様な働き方を実現することの難しさが浮き彫りになっている。
小売業界の実情を考えた措置
裁量労働的な考え方に立脚していないことは、もう1つの特徴である出社時間の選択方法からも分かる。
出社時間は、基本的に午前の8時、9時、10時の3つになるので、それ以外の勤務パターンの社員は原則として存在しない。つまり、この制度では午前10時から午後4時30分までの時間帯であれば、全員が出社していることになる。
これは、多様な働き方を認めつつも、チームメンバー全員が顔を合わせて仕事をするという従来型マネジメントを強く意識したものといえる。今回の制度は、従来の日本型マネジメントの制度をできる限り残しつつ、その範囲内で多様な働き方に対応する仕組みと考えてよいだろう。
同社の主力事業はコンビニだが、コンビニ店舗のほとんどはフランチャイズ契約したオーナーが経営しており、同社の社員が現場に立っているわけではない。ただ小売店は現場あってのビジネスであり、現場を持たない他の業種と比較した場合、「一斉に同時刻に働く」意識は強い。
小売りというものが、現場主義的な雰囲気を色濃く残す業界の1つであることを考えた場合、今回の制度は現実的であり、可能なところから取り組んでいく同社の取り組みは評価してよいだろう。
だが一方で、始業時間や労働時間があらかじめ決まっているという点では、従来と何も変わっていないと解釈することもできる。本当の意味で、働き方の多様化に対応するためには、仕事の進め方そのものを社員の自主性に任せる必要があるが、このカベは大きい。
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