CXシリーズに救われたマツダの決算:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)
マツダが17年度決算を発表。各地域での販売台数推移を見ると、同社のクルマは全世界で売れていることが分かる。そして、その結果の要因はCXシリーズなのだ。
4月27日。マツダの2017年度決算発表会が開かれた。まずは基本的な数字をさらってみる。
- グローバル販売台数は対前年5%増の163万1000台で過去最高
- 売上高3兆4740億円、営業利益1464億円、当期純利益1121億円と増収増益
この中で決算が良いか悪いかを端的に表す言葉は「増収増益」で、これを見る限り、ご同慶の至りと言うことになる。たまにはこういう財務系の単語を読み慣れていない人に向けて基礎的な解説をしておこう。
売上高と営業利益
売上高は問題ないだろう。営業利益とはざっくりと言って本業の利益のことで、要するに「クルマを作って売ってもうかっている金額」だ。当期純利益はそれ以外の諸々、金利だとか本業以外の損失や利益を加味し、税金なども全部を支払って、最終的に会社に残るお金がいくらかを示す。個人で言えば可処分所得のようなものになる。
仕組み的にはこういうことだ。「売上高が増えた」、つまり増収は商品が売れたことを指す。ただし例えば、広告宣伝費や販売促進費をべらぼうに投入して効率の悪い営業をすると、売り上げが増えた分以上にコストがかかることがある。やり過ぎれば「増収減益」になる。
一例を挙げると、1000円売り上げを増やすのに1500円かけるようなケースだ。注意すべきは売り上げを額面で1000円得るために1500円使うのではなくて、1000円増加させるのに1500円である点だ。売り上げ全体が1万円なら、これを合理的と判断する場合もあり得る。例えば「クラスで最も売れている○○」とうたうことで人気が上がったりする相乗効果を狙う場合などだ。
だからマツダの本年度決算が増収増益ということは「今年の決算は基本ラインで合格でした」ということを言っているわけだ。
ちなみに、増収増益は事業が拡大局面にあることを指し、増収減益は拡大の中に何かの無理があることを表す。良いか悪いかは無理の内容次第だ。減収増益は業務を整理して効率化した可能性が高いし、減収減益はもう失敗としか言いようがない。むしろ妥当な説明ができるならぜひ聞かせてほしいということになる。
増収増益の構造
さて、決算の詳細を見ていこう。まずは各地域での販売台数推移とマツダがそれを何によるものだと考えているかだ。
販売台数:対前年4%増の21万台
要因:CX-5とCX-8
販売台数:対前年1%増の43万5000台
要因:CX-5とCX-9(北米全体ではカナダが1%増の7万5000台。メキシコが2%増の5万5000台)
販売台数:対前年3%増の26万9000台
要因:CX-5
販売台数:対前年11%増の32万2000台
要因:CX-4とCX-5。アクセラとアテンザも引き続き好調
販売台数:対前年5%増の39万4000台
要因:CX-5とCX-9(オーストラリアのみ言及)
これらのページで説明されているのは、マツダのクルマは全世界で売れているということだ。販売台数がマイナスになったマーケットは1つもない。そして、その結果の要因はほとんどがCX-4、CX-5、CX-8、CX-9とSUVだということになる。
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