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良いことばかりではない リモートワークの“実態”働き方改革の第一歩(1/4 ページ)

働き方改革の柱として注目されている「リモートワーク」。制度として導入する企業も増えており、政府も躍起になって推進している。ただし一方で、リモートワークを導入したことで見えてきた課題もあるという。

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 働き方改革の中でも、「場所の自由」を実現する柱として注目されている「リモートワーク」。在宅勤務やテレワーク、クラウドソーシングなどとも呼ばれるが、会社以外の遠隔地で、Eメールや電話などを使ってオフィスにいる社員あるいは外部の取引先などとコミュニケーションをとりながら仕事を行う勤務形態だ。総務省は、地域活性化にもつながるICT利活用促進政策の1つとして掲げている。

リモートワークで場所に縛られない働き方に関心を持つ企業は多い
リモートワークで場所に縛られない働き方に関心を持つ企業は多い

 リモートワークの導入により、企業にもたらされるメリットは次のようなものだと言われている。

社員の業務生産性向上

オフィスでのムダなコミュニケーションや会議などから解放されることによって、必要な業務に集中して取り組むことによって業務遂行量が向上する。顔を合わせるコミュニケーションがなくても、ICTツールによってチームの一体感が失われることはなく、むしろ強化される例もある。

企業コストの削減効果

社員のために用意する備品類や光熱費などの固定費が削減できる。リモートワークに従事する社員の割合によっては、オフィスそのものの家賃や土地代も削減できる可能性がある。さらに、通勤がなくなるため、交通費を支給する必要がなくなる。

通勤からの解放

通勤がなくなることは、人によっては往復2時間を超える通勤時間を別なこと(仕事だけでなく、趣味や家族と過ごす時間)に使えるというメリットも生む。さらに通勤によるストレスなどの健康に及ぼす影響からも解放される。

人材の多様化

リモートワークを導入することにより、会社の場所を中心とした採用を行う必要がなくなるため、人材獲得の幅が広がり、いわば世界に対して募集を行えるようになる。

リモートワーク導入企業の狙いは?

 こうしたことから、リモートワーク制度を導入している企業が続々と増えている実態がある。その一部を紹介しよう。

 日本ヒューレット・パッカードでは、「フレックスタイム」制と合わせて、従業員が場所や時間に縛られない働き方を提供しており、「フレックスワークプレイス」(FWP)という制度を使えば、週2日、月8日まで、会社以外でも仕事ができる。特に理由がなくても、「明日はFWPで働きます」と上司に報告すればよい。通勤時間の短縮のために家で仕事をしたり、子育て中で、子どもが熱を出したりしたときに、午前中に小児科に行って午後は在宅で仕事をしたりできるようになる。

 社員に話を聞いてみると、「昔は遅くまで残る社員もいたのですが、今は早く帰って家族と過ごし、夜に少し仕事をする、といった時間の有効活用ができています」。

 従来のITサービス業は、開発者と運用管理者などが同じ場所で顔を見ながら仕事を進めることが一般的だったが、ITサービス大手のSCSKでは、2017年8月から「どこでもWORK」という制度を全社展開した。

 リモートワーク制度推進の後押しをしたのは、社員における少子高齢化、それに伴う介護が身近になってきたことが理由にあるという。ワークライフバランスが重視される今、社員に柔軟な働き方を提供できる施策を打たないと人材が集まらなくなりつつあり、また、リモートワークなどの施策がなければ、人材自体が活躍できる時間も短くなってしまう。そこで同社では、ICTをフル活用し、リモート環境でも自席と同様に働けるようにして、月に3回程度の在宅またはサテライト勤務を推奨している。

 インテリアデザイン・施工を手掛けるコスモスモアでも、フリーアドレスだけでなく、リモートオフィス制度が取り入れられている。担当者は「上司が部下を間近で見ること=管理、という考え方は、ダサいと言いますか、今の時代にそぐわないのではないでしょうか」と語っている。「『部下が目の前にいたらマネジメントできるの?』と疑問に思ってしまいます」。

働き方改革を自社でも推進するコスモスモア(出典:同社サイト)
働き方改革を自社でも推進するコスモスモア(出典:同社サイト)

 リモートワークの導入が現実的なものになっているのは、インターネット上のクラウドサービスが進展、充実してきたからでもある。クラウドスペースを利用すれば、社外からでも資料を閲覧して編集したり、クラウド上で作業をすべて完結させたりすることが可能になる。社内外を問わずネットワーク環境さえ整えば、社内と同等の仕事ができる環境になる。

 クラウドセキュリティサービスを提供するHDEでは、業務を実際にクラウド化することで、何が課題になってくるのか、自社を実験場として社員が働く「場」づくりに努めている。

 同社では、エンジニアに限らず、セールスや、企画・総務・人事などの今まであまりリモートワークがされていなかったバックオフィス業務でも、積極的にリモートワーク導入を進めている。コーポレートサイトを見ると、シングルファーザーとして育児をしながら時短かつリモートワークでセールス業務を行う人や、女性で育児をしながら在宅で総務庶務業務を行う方、台湾でセールスを行う女性の例が紹介されている。時短でリモートワークにすることで、従来、制約条件のために働けなかった優秀な人を採用することができているという。

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