瀬戸大橋30周年、四国は本州スーパーの草刈り場に:小売・流通アナリストの視点(1/3 ページ)
瀬戸大橋が開通して今年で30周年。その後、明石海峡大橋、瀬戸内しまなみ海道が開通したことで、2000年代以降、本州〜四国間は実質地続きになった。その影響で四国のスーパーマーケットの勢力地図が激変したのだ。
瀬戸大橋が開通して今年で30周年を迎えた。開通当初は通行料の関係もあり苦戦したようだが、香川県から岡山県まで通勤、通学する人も増えて、今では橋を通る車は1日に2万台以上、JR瀬戸大橋線の利用者は1日2万人以上となり、本州〜四国の行き来はかなり密接になった。
JR瀬戸大橋線には何度か乗ったことがあるが、岡山〜坂出間は思った以上に近い上に、景色も素晴らしく快適だ。それ以前は連絡フェリーで2時間だったところが、40分に短縮されたことも大きい。1988年の瀬戸大橋に続き、98年には明石海峡大橋、99年に瀬戸内しまなみ海道が開通して、本州と四国を結ぶ3ルートが完成。2000年代以降、本州〜四国間は実質地続きになった。
瀬戸大橋30周年に関連する報道では、例えば、「橋は産業、観光などで経済効果を生んだ。移動や輸送の時間は短縮され、県産品の販路拡大や企業の進出などをもたらした。県勢発展、四国における拠点性の維持。恩恵は大きい」といったプラスの経済効果を伝えながらも、本州に人や商売を吸い上げられる「ストロー効果」といったマイナス面での影響について書かれたものが多かった。ただ、外国人観光客の増加という面では確実に吸引効果が見られるようであり、インバウンド需要の取り込みには、今や欠かせないインフラとなっているようだ。
四国は本州企業の草刈り場に
地続きになった四国では環境変化の影響で、この15年ほどの間に、スーパーマーケットの勢力地図が激変した。橋で本州につながった徳島県、香川県、愛媛県(3県の合計)における00年と15年の食品販売額ランキングを比較してみた(図表)。
黄色網掛けが本州企業、網掛けなしが四国企業を示しているのだが、00年には上位企業の大半が四国企業だったのが、15年には本州企業が多数ランキングを占拠していることが一目瞭然だ。00年当時のトップシェア企業だったマルナカというスーパーは15年でもトップなのだが、国内最大手でもあるイオングループに買収されて、本州企業になった。それ以外でも、この期間に本州企業の参入が相次ぎ、新しい顔ぶれによって四国マーケットは再分割されてしまった。
00年に7%程度だった本州企業のシェアは、15年時点では43%となり、今でもそのシェアは拡大中という状況だ。スーパーマーケット業界においては、四国は本州企業の草刈り場となったのである。
かつて、本四連絡橋のない時代、四国への物流はコストがかかる割にはマーケット規模が小さいという判断から、本州の企業は四国への進出には消極的であり、四国内では地元企業がシェアを分け合っていた。エリア内での競争があって、上位集約は進行したが、基本的には限られたプレーヤー同士での陣取り合戦であったため、ある意味、手の内が分かった相手との緩やかな競争だった。
その間に、本州のスーパーはかなり進化していた。幹線道路沿いに、大型の食品スーパー+ドラッグストア+ホームセンターや百円ショップといった専門店との複合施設を造り、小型・中型の単独店(スーパー、ドラッグストアなどが単独で出店している店。フリースタンディングとも呼ばれる)を運営している企業を駆逐した。このため、本四連絡橋が出そろった00年代には、四国の対岸である中国地方の有力企業は、こうした大型複合施設を得意とする企業や新手のディスカウントストアなどで占められていた。
中国地方では00年代以前にこのような競争が進行したため、小型・中型単独形式の競争相手は既に淘汰が進んでおり、大型複合施設同士、もしくはディスカウントストアとの競争となり、有力企業間で勝ったり負けたりという激戦に入りつつあった。
そうした時期に四国に3本の橋が架かり、実質地続きとなったことで、本州企業にとって進出可能なエリアが拡大した。その上、四国には小型・中型単独店が温存されていたため、本州の有力企業から見れば、そこはまさに「新大陸」であった。こうして四国には、中国地方から有力企業がなだれ込み、ほぼ一方的にシェアを奪っていった。
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