「一蘭」にハマった外国人観光客は、なぜオーダー用紙を持って帰るのか:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
ラーメン店「一蘭」といえば、食事をするスペースが仕切られている味集中カウンターが有名である。珍しい光景なので、外国人観光客も写真を撮影しているのでは? と思っていたら、店員さんに「オーダー用紙を持ち帰りたい」という声が多いとか。なぜ、そんな行動をしているのかというと……。
ラーメンのおいしさが何よりも大切
では、付加価値をどう上げていくかといえば、先ほどの吉冨社長がおっしゃったように、「外でうたっていることよりも中味を少し上げる」という方法が一番確実だ。「うまいとんこつラーメン」をうたって商売をするのなら、その口上を上回るだけ「うまいとんこつラーメン」を提供する。そこを突き詰めるのは、余計な接客や、餃子や炒飯などのサイドメニューは重要ではない。むしろ、とんこつラーメンの付加価値をぼやかしてしまう「雑音」になってしまう恐れもある。
そのように一杯の付加価値のみを突き詰めた結果が、味集中カウンターであり、オーダー用紙なのだ。
「生産性向上」と聞くと、ほとんどの人は効率よく働けとか、給料を上げろとか騒ぐが、「働き方会改革」と叫べば叫ぶほど、ハードなブラック企業が溢れている今の状況を見ても分かるように、そこは本質ではない。
本当に大切なのは、一蘭のように、ひとつのことにフォーカスを当てて、その付加価値をとことん高めていくために不要なものを捨てていくことだ。そのような「選択と集中」を研ぎ澄ませていけば自然と、生産性向上という結果が後からついてくるのだ。
と、口で言ってしまうとなにやら簡単に聞こえるが、日本社会ではこういう選択と集中ができるほうが少数派だ。
みなさんの職場や、お勤めの会社を思い返してほしい。結論が出ないまま、同じ議題を無限ループする会議、社内稟議を通すため前に行なわなければいけない根回し、やる仕事がなくても上司がいる限り帰れない暗黙のルールなどなど、仕事の価値を上げていくこととは、どう考えても関係のないことが多すぎないか。
しかし、「じゃあ無駄だから一切止めてしまおう」とは誰も言い出せない。なんでもかんでも効率化を目指すと、ギスギスして会社としての一体感が生まれない。一見すると、無駄に見えることが、実はすごく意味がある云々とすさまじい反論が寄せられてしまうからだ。それは、吉冨社長も同じだった。
「私が始めたことはすべて、周りから反対されました。声を出さないで替え玉を頼めるようにチャルメラが流れる仕組みをつくったときなどは、『こっちのほうが音が鳴って恥ずかしい』などバカにもされましたが、今では周りを気にせず注文できると大変好評です。でも、結果、ラーメンのおいしさが何よりも大切です」
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