登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪:赤坂8丁目発 スポーツ246(3/4 ページ)
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。
「ニートのアルピニスト」として売り出す
生前の栗城さんは「冒険の共有」をテーマに全国でも講演活動を展開し、多くの若者から支持を集めていた。これまでも世界6位のチョ・オユーや同7位のダウラギリなど8000メートル級の巨峰も制覇。「日本人初となる世界七大陸最高峰の単独無酸素登頂に挑戦している」という言葉で自らのキャラクターをメディアに向けて発信していた。
だが、この単独無酸素の言葉には有識者たちに以前から疑問を投げかけられている。サポートチームからの支援を一切受けずに己の力だけで山頂を目指す「アルパインスタイル」ではなく、シェルパらの固定ロープ設置やキャンプ設営などのサポートを全面的に受けながらの「極地法」で山頂アタックを仕掛けていたケースが、これまでも確認されていたからだ。テレビ番組で栗城さんのことを「マラソンに例えれば、彼はプロランナーではなく市民ランナー。3.5流のレベル」と言い切る著名な登山家もいた。
しかも栗城さんは2012年のエベレスト登頂に失敗した際も、下山途中に深刻な凍傷を負って両手の指9本の第2関節から先を失ってしまっていた。「これでは岩もつかめず、ピッケルも使うのが困難」と有識者から指摘されるのも無理はない。普通に考えれば、こういうハンディキャップを背負いながらエベレストの南西壁という絶壁を登ることなど、わざわざ命を捨てに行くようなものだ。
それでも、なぜ栗城さんは、あえて難攻不落の「単独無酸素・エベレスト南西壁ルート」に挑んだのか。おそらく、もう後へ引けない状況になってしまっていたのだろう。某民放局の有名プロデューサーはブレイクする前の栗城さんを自らの番組で取り上げ、全国的な有名人に仕立て上げるべく「ニートのアルピニスト、初めてのヒマラヤ」として売り出した。実際はニートではなかったが、このキャッチフレーズはやがて一人歩きし、殻を打ち破れずに悩んでいる若者たちの共感を受けるようになった。
2009年のダウラギリ登頂などインターネットでも登山の様子が中継されるようになってPV数を稼ぐようになるとスポンサーも集まり、やがては大手芸能事務所も彼の元へ飛び付いた。
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