上場果たした「ビリビリ動画」とは? 「日本アニメは中国で人気」の実際:山谷剛史のミライチャイナ(4/4 ページ)
NASDAQにIPOを果たした中国の動画サイト「ビリビリ」は、ニコニコ動画のようなコメント“弾幕”機能など、日本製アニメなどとの親和性の高さで日本でも知られている。その中国での人気はどうなのか? 現地に詳しい山谷氏のリポート。
ニッチになる? 日本製アニメのこれから
熱心なファンがいるからこそ、ビリビリ主催で日本の声優を招待したイベントは盛り上がる。ただ日本のアニメがマイナーだとすると、メジャーに訴えていかなければならない。
今季はビリビリで「魔法少女 俺」が字幕版配信に加え、中国語吹き替え版も実験的に登場した。声優の演技についても評価はいい。日本人からすれば中国で日本の声優ブームがあるようにも見えるが、今後は中国語の吹き替え版が増えていき、日本の声優ブームはより小さく、ニッチな趣味になっていく可能性がある。
5月には、ビリビリが日本でコンテンツ制作に乗り出すべく、東京・人形町に制作スタジオを開設し、ビリビリオリジナルの作品を作ると発表した。スターティングメンバーとして、監督・アニメーター・制作進行、仕上、編集を募集し、年間3本のアニメ制作を目標に掲げている。
ところで「極光大数据」による大学生のアプリ利用実態リポートによると、ビリビリのユーザーは「大学の中でも名のある一流大学」「北京・上海・広州・深センないしはこれに続く大都市」「2000年代生まれよりも1995〜99年生まれ」──で多い傾向がある。95〜99年生まれといえば現在19〜23歳。つまり、これより若い人は少しずつではあるが、日本製アニメを見る人の割合が減る傾向にある。
中国では様々なジャンルのアニメが公開されているが、コアなファンは少なく、ゲームやドラマ視聴と同じようにスマホなどで消費している感がある。また上述の通り、中国で配信される日本の青年向けアニメはほぼ男性向けだ。今後、日本のアニメ人気は中国では縮小していくと考えられるが、ゼロに近づくとは考えづらい。たとえ政治的な理由でアクセスできなくなっても、規制の壁を越えてヘビーユーザーは日本のアニメを視聴し続けるだろう。
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