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「民泊2020年問題」勃発 揺らぐ「観光立国」ニッポン「民泊新法」施行直前も届け出わずか724件(4/5 ページ)

民泊を合法的に整備するために制定された民泊新法(住宅宿泊事業法)が6月15日に施行される。だが、新法に基づいて各自治体に出された届け出件数は5月11日時点で724件しかない――。

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観光庁は過度な規制を抑制

 各自治体が新法に上乗せして厳しい規制をする動きに対して、観光庁は、ガイドラインを設けて自治体にきめ細かく説明してきた。しかし、新法では各地域の実情に配慮して規制ができるとされているため、この上乗せ規制の動きを止めることはできなかった。「条例で営業する時間や地域に厳しい規制を掛けすぎると、事業者側から営業妨害などに当たるとして訴訟を起こされるリスクが出てくる。地域の事情はあるにしても、少し規制が行き過ぎではないか。法令の趣旨からみて適切ではない」(観光産業課)と過度の規制に対して、ブレーキを掛けようとした。

 だが、大半の自治体が地元の住民の意向を重視して厳しい条例を成立させ、施行した。このままでは、民泊についての自治体側の規制が強くなり過ぎて、20年の東京五輪を前にして、訪日外国人を排除するような印象を与えるのではなかという声も聞かれる。

 マンションの民泊ではオーナーが宿泊者向けに貸し出すため、ホテルのフロントのような常駐者が誰もいない。そうなると、犯罪の温床として使われる恐れも出てくるため、防犯上も問題になる。こうした点については、いまの民泊新法では考慮されておらず、どのように対応するか課題が残る。せっかく手作りのおもてなしを提供しようとしていた民泊事業者にとって、民泊が事件や犯罪に使われると、安全安心のイメージが崩れてしまう。

施行直後に「パニックが起こる」との懸念も

 民泊の登録件数が少ない理由について、民泊仲介サイト「ステイジャパン」を運営し、民泊新法の制定にも尽力してきたベンチャー企業「百戦錬磨」の上山康博社長は「いまはヤミ民泊をなくして合法民泊にする市場形成の過渡期だ。ただ新法施行直後は、民泊登録していない施設には泊まれなくなるために、パニックが起こるかもしれない」と指摘した。

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「新法施行直後は、パニックが起こるかもしれない」と話す百戦錬磨の上山康博社長

 民泊新法の規制が厳しいためヤミ民泊が再び台頭する恐れがあるのではという心配には「それはない。ヤミ民泊は激減する。いままでヤミ民泊で稼いだ多くの事業者は、この厳しい規制では事業が割に合わないことから撤退が相次いでいる。新法に基づく民泊は匿名性が排除され、安心して泊まれる施設になる」と、合法民泊の安全性を強調した。

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