なぜレオパレス21の問題は、旧陸軍の戦車とそっくりなのか:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
レオパレス21が「界壁」問題で揺れている。界壁とは、部屋と部屋の間を仕切るモノだが、同社の物件には屋根まで達成していないモノが複数存在していることが分かった。この問題に対し、筆者の窪田氏は「日本型組織のスタンダート、というか伝統だ」と指摘する。どういう意味かというと……。
入居者という「中身」が横ばいであれば普通に考えれば「破たん」
戦後、司馬遼太郎は、参謀を務めたことのある兵科の少佐から、陸軍技術本部の優秀な技術者たちの、敵国と比する戦車をつくるべしという申し出を参謀本部が跳ね返したという事実を聞いた。彼らの言い分をまとめると以下のようなものだったという。
「戦車であればいいじゃないか。防御鉄鋼の薄さは大和魂でおぎなう。それに薄ければ機動力もある(厚くて機動力をもつのが戦車の原則)。砲の力がよわいというが、敵の歩兵や砲兵に対しては有効ではないか」(同上)
日本の戦車戦が悲惨な結末を迎えていることからも分かるように、これはちっとも「有効」ではなかった。どの国も歩兵や砲兵は、だいたい分厚い鉄鋼の戦車が守る。この元参謀によれば、参謀本部には戦車隊出身の幹部は1人もいなかったので近代戦の構造をそもそも知らなかったのではないかと推察している。
つまり、陸軍のマネジメント層は、自分たちが置かれた厳しい状況を客観的に見ることができず、「大和魂」のような根拠のない精神論や、世界は自分たちを中心に回っていると思い込む御都合主義に完全にとらわれていた。その「重篤な病」が目に見える症状としてあらわれたのが、「戦えない戦車」だと考えるべきなのだ。
では、「界壁のないアパート」は、いったいどんな「病」の兆候なのか。
先ほど、レオパレスのWebサイトには「よくいただく質問」というページがあると申し上げたが、そこにちょっと陸軍参謀かと目を疑うような記述があった。「少子高齢化で学生の数が減少していくなか、今後もワンルームを建築し続けて大丈夫なのか?」という質問に対して、こんな回答がよせられていたのだ。
「年齢別の単身世帯数の将来推計を見てみると、当社の入居者層である生産年齢人口と呼ばれる15〜64歳の「単身世帯」は1,000万世帯超で、2035年までほぼ横ばいと予想されており、入居需要は今後も一定数を見込める状況です」
以前、大東建託の記事でも触れたが、日本では今も年間40万戸の新築賃貸住宅がつくられていて、そこに加えて、これまでレオパレスや大東建託のようなメーカーが生み出してきた膨大な数の賃貸住宅にあふれている(関連記事)。このように「器」だけが右肩上がりでも、入居者という「中身」が横ばいであれば普通、「破たん」という言葉が浮かぶ。にもかかわらず、「一定数を見込める」と自信満々で断言できてしまうあたりに、「防御鉄鋼の薄さは大和魂でおぎなう」と似た精神構造を感じてしまう。
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