なぜレオパレス21の問題は、旧陸軍の戦車とそっくりなのか:スピン経済の歩き方(5/5 ページ)
レオパレス21が「界壁」問題で揺れている。界壁とは、部屋と部屋の間を仕切るモノだが、同社の物件には屋根まで達成していないモノが複数存在していることが分かった。この問題に対し、筆者の窪田氏は「日本型組織のスタンダート、というか伝統だ」と指摘する。どういう意味かというと……。
臭いものにフタの対応をするのか
全上場企業の約80%がレオパレスを寮や社宅として利用しているという実績があるので、「法人企業が採用に積極的になればなるほど、寮・社宅として当社利用が増加していくことが期待されています」というが、過去5年でパナソニックが11万人、ソニーが4万人という大幅な従業員の削減を行い、メガバンクも採用を減らす今、なぜそこまで強い「期待」を抱くのか。その自信の根拠は何なのか。
大変申し上げづらいが、筆者には陸軍参謀本部が冒されたのと同じ「病」を感じてしまう。もちろん、それは賃貸住宅業界だけの問題ではない。
「一生暮らせる安心、安全の高級マンション」をうたいながらも、工期に間に合わせるために基礎工事をサクッと手を抜く。「世界一の品質」をうたいながら、ノルマをこなすために検査データを改ざんする。「世界一の原発メーカー」をうたいながら、思うような結果が出ないとしれっと利益をかさ上げする。
あらゆる業界、あらゆる組織で、陸軍参謀本部のような御都合主義的な持論が展開され、それが不正のトリガーとなっているのだ。
歴史に「もし」はないが、「九七式中戦車」のような大きな問題のある兵器しかつくれなくなっていた時点で、陸軍参謀本部が、自分たちの「病」に冒されていることを受け入れて、ゼロからの組織改革にのぞんでいれば、その後の戦局は大きく変わっていたかもしれない。
意図のありなしはさておき、レオパレスが「界壁のないアパート」を世に送り出していたのは紛れもない事実だ。そして、成長エンジンであるサブリースへの批判が高まっている現実もある。これを受けて、経営陣はどういう判断をするのか。
「施工業者がミスしないようにこれまで以上に厳しく管理します」「サブリースを誤解している人がいるのでしっかり説明していきます」というだけでは、根本的な問題解決に至らないと感じるのは、筆者だけだろうか。
旧陸軍は戦局が厳しくなればなるほど、「国民の戦意高揚」の名のもとで宣伝戦に力を入れた。そういえば、賃貸需要の冷え込みが一部で指摘されるなかで、レオパレスも大東建託もそんな景気の悪い話を吹っ飛ばすようにテレビCMをバンバン流している。
『ガイアの夜明け』以降、株価も続落するなかで夢中で頑張るレオパレスに、我々は心の底からエールを送れるようになるのだろうか。注目したい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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