子どもを持つのは国のため? 「3人以上産んで」発言に潜む“幻想”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/5 ページ)
加藤寛治衆議院議員の「3人以上子どもを産んで」発言。「何が問題なのか」という声も聞こえますが、こうした発言が繰り返される理由を理解しておく必要があります。そこには、戦時中から変わらない「価値観」がはびこっていて……。
戦時中の「当たり前」を押し付ける人たち
しかも、日本の幼児教育の公的資金は世界最低です。こんな状況でどうやったら「子どもを3人産める」のか? よほどの財力がある人じゃないと、子どもを3人持つだなんて夢のまた夢。到底ムリ。ムリです。
産んだところで、預ける場所もなく、働くこともできず……。方や、「男」というだけで稼げる時代でもなければ、正社員=安定、なんて時代でもない。右肩上がりの給与も期待できなきゃ、いつ「もういらない」と放り出されるかも分からない。
それでも「国益」という、言語明瞭意味不明の言葉で、加藤氏の発言を容認するのか。申し訳ないけど、私にはまったくもって理解できません。
思い起こせば今から4年前の14年6月。都議会で「早く結婚しろ!」などと、下品なヤジを飛ばした男性議員が問題になりました。ヤジが飛んだとき、周りの男性たちは笑っていました。しかも、その下品なジジイを、かばうような発言をした男性たちもいたし、ヤジを吐いた当人の“言い訳”も、これっぽっちも納得いくものではありませんでした。
こういうオッサンたちほど、
「ナニ? 保育園の迎え? そんな理由で早退するなんて、信じられん」
「40過ぎて女房1人探してくることができないなんて、親が泣くぞ!」
などと終身雇用、年功序列、専業主婦が当たり前だった時代の、過去の「価値観」を押し付け、平気で男性たちにも刃を向けるのです。
もういいかげん、戦時中の「当たり前」から脱してほしい。そうです。戦時中の「結婚十訓」。聞くだけでおぞましい、内容を国民に押し付けたあの頃から全く変わらない、シーラカンス的発言が、今なお、霞が関で横行しているのです。
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