豊田章男自工会新会長吠える!:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/3 ページ)
「この事実をしっかり報道してください」――。2018年5月に日本自動車工業会の会長に就任したトヨタ自動車の豊田章男社長が、最重要課題として強く訴えたのが自動車関連諸税の問題だ。
「日本の自動車関係税は世界でとんでもなく高いんです。ちょっと多いとか、そういうことを言っているんじゃないんです。例えばフランスは保有税はゼロです。米国との比較では31倍。そういう事実を皆さん報道してください」
「自動車工業会の会長としてこの問題を政府に陳情しても、まるで業界団体が政府に業界の応援をお願いしているような構図で報道されるんです。そういう見せ方の報道をされると見ている人たちの中には『こないだ決算発表見たけど、自動車メーカー各社はもうかっているじゃない。何でもうかっている自動車メーカーを応援してやらなきゃならないんだ。税金いっぱい払えばいいじゃないか?』と思う人が多いと思うんです。
でも実態は違いますよね? 税金を払わされているのは、自動車メーカーじゃなくて、自動車ユーザーです。私たちはユーザーの代わりにお願いしているんです。自動車ユーザーって国民じゃないのかと言ったら、自動車ユーザーは国民でしょ。政治家も『国民、国民』って言うなら、国民である自動車ユーザーのことをもっと真剣に考えていただきたい。自動車ユーザーから取るのは、取りやすいからです。取りやすいからとあれもこれもといろんな税金を積み上げていった結果、世界的に見てどうなのって言うと、世界でも異常なほど高くなっています。この事実をしっかり報道してください」
日本のクルマのランニングコスト
2018年5月に日本自動車工業会の会長に就任したトヨタ自動車の豊田章男社長が、最重要課題として強く訴えたのがこの自動車関連諸税の問題だ。
自工会がまとめたデータで見てみよう。各国で税制は異なるので、まずは合計額で見る。180万円のクルマを購入して、廃棄されるまでの平均年数13年間で試算したグラフを見れば明らかだ。驚くべきことにその負担額は税だけでも170万円になる。しかも現実にクルマを維持するなら、その間に有料道路料金や自賠責保険、任意保険、リサイクル料金、点検整備などが別に必要で、負担の大きさは豊田会長の主張通り、まさに異常な水準にある。
諸外国のグラフにある付加価値税(グレーの棒グラフ)とは、日本でいう消費税や自動車取得税に相当する。これだけ見ると米国に次いで安いのだが、自動車税(オレンジの棒グラフ)は2位の英国の1.8倍。低い米国と比べれば23.3倍。フランスに至っては比較も何も倍率の出しようがないゼロという有様だ。
百歩譲って「自動車の購入は金持ちのぜいたくだ」と言う立場をとれば、付加価値税が高いことはまだ理解できる。購入(イニシャル)と維持(ランニング)の課税比率を比べると、実際諸外国の税制はそうなっている。そして一般に新車ではなく中古車を買えば残価率に応じて取得税率の負担が減り、一定以下の価値まで下がれば非課税になる制度設計だ。日本の場合も50万円以下なら非課税である。この部分に限っては日本の税制も諸外国と比べてもそれほどおかしなことになっていない。
しかし、日本の自動車関連税の問題の本質は、厳しいやりくりの中で乗り換えを諦め、古いクルマにずっと長く乗る場合にも課せられる自動車税、つまりランニングコストがそもそも飛び抜けて高いことだ。しかもこの高い税が、新車から13年を経過すると自動車税は15%増額。加えて自動車重量税も39%増(2トン以下の場合)、18年経過後には54%増(同上)と罰則的な課税が加算される。これでは50万円以下の中古車のメリットが失われる。工夫してランニングコストを安くする道をどうやって塞いで回るかに知恵を凝らしているように見える。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 内燃機関の全廃は欧州の責任逃れだ!
「ガソリンエンジンもディーゼルエンジンも無くなって電気自動車の時代が来る」という見方が盛んにされている。その受け取り方は素直すぎる。これは欧州の自動車メーカーが都合の悪いことから目を反らそうとしている、ある種のプロパガンダだ。 - あなたはカローラの劇的な変貌を信じるか?
カローラ・ハッチバックのプロトタイプ試乗会のために富士スピードウェイの東コースへ訪れた。そこで目の当たりにしたのはカローラの劇的な変貌だった。 - パリ協定の真実
世界中で内燃機関の中止や縮小の声が上がっている。独仏英や中国、米国などの政府だけにとどまらず、自動車メーカーからも声が上がっている。背景にあるのが「パリ協定」だ。 - 【訂正版】タイムズのカーシェアと提携するトヨタの狙い
トヨタ自動車がカーシェアリングサービス「タイムズカープラス」を運営するパーク24との提携を発表した。この背景にはトヨタの複雑で大掛かりな戦略が見えてくるのだ。 - 燃料電池は終わったのか?
2014年末にトヨタが世に送り出したMIRAIだが、最近話題に上ることは少なくなった。「燃料電池は終わった」とか「トヨタは選択を間違った」としたり顔で言う人が増えつつある。実のところはどうなのだろうか。