豊田章男自工会新会長吠える!:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/3 ページ)
「この事実をしっかり報道してください」――。2018年5月に日本自動車工業会の会長に就任したトヨタ自動車の豊田章男社長が、最重要課題として強く訴えたのが自動車関連諸税の問題だ。
若者のせいにしている場合ではない
制度設計側では「古いクルマは環境負荷が高いからエコカーへの乗り換えを促進しよう」という大義名分を掲げるが、仮にそれを正論としても、罰則で誘導できるのは、しぶしぶでもその負担を許容できる場合に限る。今や先進国の中で異例なほど人件費が安くなった日本では、ない袖は振れないところへ追い詰められている。
日本の自動車諸税。あらゆる税が加算され、消費税と揮発油税の二重課税問題や、臨時措置法であったはずの旧道路特定財源(揮発油税や重量税など)がいつのまにか恒久化し、しかも道路整備の目的税としてスタートしておきながら、一般税化された結果、受益者負担と関係のない利用のされ方になっている。税でありながら不透明な部分が多すぎる
厚生労働省の調査によれば17年の新卒平均初任給は大卒男性で207.8万円。大卒女性だと204.1万円。月割りにすればそれぞれ17万3166円と17万83円。もちろん額面だからそこから税や社会保障関連費用が差し引かれる。初年度はまだしも、前年度年収によってそれらの重圧が加わる2年目以降の手取りは16万円に満たないはずだ。黙っていてもベースアップがある時代ではない以上、給料が上がる想定で消費などできない。手に入れたが最後、ずっと馬鹿げたランニングコストを吸い取られるクルマを所有する気になどなるはずがない。
前述の通り、13年で170万円の税がかかるとすれば、それを月当たりに均等割すると1万円を超えてしまう。新車時にかかる部分も丸ごと均等割ではあるが、そもそもクルマの重量や排気量によって条件はいろいろと変わる。なのであくまでも目安として考えていただきたい。
1万円を超える税負担は純粋な保有コストであり、そのクルマを使って有料道路を走ったり給油したりすることも、高額すぎる駐車場代も保険料も含まれていない。若年層には保険料までもが罰則的な金額になるため、諸税と駐車場、保険料を合計すれば地価の安い地方ですら恐らく月額3万円くらいは必要になるだろう。こういう現実を前に「若者のクルマ離れ」などという言葉は空虚に過ぎる。若者の現実に寄り添えない制度の設計が傲岸不遜すぎるのだ。
関連記事
- 内燃機関の全廃は欧州の責任逃れだ!
「ガソリンエンジンもディーゼルエンジンも無くなって電気自動車の時代が来る」という見方が盛んにされている。その受け取り方は素直すぎる。これは欧州の自動車メーカーが都合の悪いことから目を反らそうとしている、ある種のプロパガンダだ。 - あなたはカローラの劇的な変貌を信じるか?
カローラ・ハッチバックのプロトタイプ試乗会のために富士スピードウェイの東コースへ訪れた。そこで目の当たりにしたのはカローラの劇的な変貌だった。 - パリ協定の真実
世界中で内燃機関の中止や縮小の声が上がっている。独仏英や中国、米国などの政府だけにとどまらず、自動車メーカーからも声が上がっている。背景にあるのが「パリ協定」だ。 - 【訂正版】タイムズのカーシェアと提携するトヨタの狙い
トヨタ自動車がカーシェアリングサービス「タイムズカープラス」を運営するパーク24との提携を発表した。この背景にはトヨタの複雑で大掛かりな戦略が見えてくるのだ。 - 燃料電池は終わったのか?
2014年末にトヨタが世に送り出したMIRAIだが、最近話題に上ることは少なくなった。「燃料電池は終わった」とか「トヨタは選択を間違った」としたり顔で言う人が増えつつある。実のところはどうなのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.