日本の親が子どもを「モノ」扱いしてしまう、根本的な理由:スピン経済の歩き方(7/7 ページ)
東京都目黒区で船戸結愛ちゃん(5)が虐待の末に死亡した。痛ましい事件が起きた原因として、専門家からは「児童相談所と警察がきちんと連携していなかったからだ」「児相の人員が不足しているからだ」といった声が出ているが、筆者の窪田順生氏は違う見方をしている。それは……。
今本当に必要なのは
今回、さまざまな問題提起がされるなかで、警察が結愛ちゃんの「反省文」を公開したことについて、「子育てに悩む親を余計に追いつめて問題の根本的な解決にならない」という意見を目にした。
パッと見、リベラルで斬新な考え方のような印象を受けるかもしれないが、筆者から言わせると、戦前からなんの変わり映えもしない「子どもは親の所有物」に基づく考え方である。
「児童虐待」は子育てや生活苦に悩む「弱い親」が行ってしまう。だから、そんな弱い人々を社会全体で手厚く支えてやることが解決の道である――。
専門家が触れ回るこの手の話も、少し冷静に受け取れば、そこに「虐待される側」の視点が抜けていることに気付くはずだ。我々は病んだ社会にどっぷりと浸かっているせいで、「親」に手を差し伸べることばかりに執着し、いまだ子どもを「親の付属物」としてとらえている自覚がないのだ。
他人事ではない。私もついカッとなって子どもに手をあげたことがある。そういう悩める親同士の苦しさは、『クローズアップ現代』とかで扱えばいい。こういう悲劇を防げなかったのは我々ひとりひとりの責任だ、みたいに問題を社会に分散させるのもなんの解決にもならない。
今本当に必要なのは、結愛ちゃんのような子どもをこれ以上出さないために、近代日本から続く、「子どもは親のモノ」という呪いのような常識を壊すことではないのか。
香川で保護されたとき、結愛ちゃんは「パパ、ママいらん」と言っていたが、結果としてそのまま自宅に送り返された。100年以上、「親中心主義」だった我々が「子ども中心主義」に移行するのは容易なことではないが、それをやらないといつまでも「子殺し」という悲劇が繰り返される。
まずはこの厳しい現実を受け入れ、虐げられた子どもの言葉に目をそらさず、真摯(しんし)に耳を傾けることから始めるべきではないのか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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