56歳で早期退職 元大手ITエンジニアが「介護タクシー」続けるワケ:連載 熱きシニアたちの「転機」(5/5 ページ)
定年後を見据えて「攻めの50代」をどう生きるのか。新天地を求めてキャリアチェンジした「熱きシニアたち」の転機(ターニングポイント)に迫る。第1回目は「介護タクシー」会社を起業した元大手ITエンジニアの荒木正人さん(70)。
70歳で仕事を楽しむということ
荒木さんの第2の人生は、少なくとも今は、思い描いていたようなバラ色では決してない。だがそのわりには、表情や話ぶりは明るく楽しげだ。それは結局、苦労することも含めて仕事を楽しんでいるからだろう。
証拠の1つが、積極的に新しいことにチャレンジする姿勢だ。例えば、少し前に思い付いたのが、介護タクシーを使った旅行支援。遠出の難しい高齢者や障害者とその家族を乗せて日帰り旅行するというサービスで、利益率も高い。まだ件数は少ないものの、これまでに長野県の上高地や静岡県の伊豆方面などへの旅行を実施した。実現するかどうかは分からないが、旅行会社やバリアフリーをうたうホテルなどとの提携も検討している。
2年後の東京五輪パラリンピックも大きなビジネスチャンスと見ている。「介護タクシーを使って何ができるか、急いで情報を集めたい」と楽しそうに話す。
30年以上もビジネスの第一線で働いてきただけに、事業が思い通りに行かないことは、荒木さんは百も承知だ。「今は耐える時期。何とかもう少し頑張れば、再び右肩上がりの時代がやってくる。そう信じてやっています」と語る。「人生100年時代」といわれる昨今、荒木さんの第2の人生はまだ始まったばかりだ。
著者プロフィール
猪瀬聖(いのせ ひじり)
慶應義塾大学卒。米コロンビア大学大学院(ジャーナリズムスクール)修士課程修了。日本経済新聞生活情報部記者、同ロサンゼルス支局長などを経て、独立。日経では、食の安全、暮らし、働き方、ライフスタイル、米国の社会問題を中心に幅広く取材。現在は、主に食の安全やライフスタイル、米国の社会問題などを取材し、雑誌などに連載。また、日本人の働き方の再構築をテーマに若手経営者への取材を続け、日経新聞電子版などに連載している。著書に『アメリカ人はなぜ肥るのか』(日経プレミアシリーズ、韓国語版も出版)、『仕事ができる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。
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