君たちはどうサボるか? 中国の働き方から学ぶ「手抜き」:常見陽平のサラリーマン研究所(3/3 ページ)
『ルポ 中国「潜入バイト」日記』(西谷格、小学館新書)を読んで、衝撃を受けた。中国でのテキトーな働きぶりが紹介されているわけだが、働きすぎの日本人も学ぶべきところがあるのではないだろうか。それは……。
ときにはサボることも大切
このように書くと、「極端な例を取り上げているだけでしょ」と思われたかもしれないが、西谷さんが経験したことに働き方改革のヒントがあると感じている。一言で言えば「自分の常識を疑え」である。特に「サービスレベルなどを疑え」だ。日本人はいつの間にか、何もかも背負い込んで、辛いことになっていないだろうか。実際、西谷さんも「どちらが正しいのか、分からなくなってきた」と語っていた。
いや、何もかもテキトーにしろと言っているわけではない。ただ、過剰なサービスに疲弊しているのではないか、簡単にできることを否定しているのではないか。ラクにやるのは、楽しいことである。困難を乗り越えたところに楽しさがあるという言説は否定しないが、ときにはサボることも大事ではないか。
私が会社員だったころ、営業車の中で寝る、トイレで寝る、サウナに行く、映画館に行く、百貨店で買い物をするといったサボリーマンをたくさん目撃した。ただ、彼ら・彼女らは自分に期待されている仕事を理解していて、提供するサービスレベルも決めていたので、疲弊することがなかったのである。
念のために申し上げるが、私は「中国人のようになれ」「中国人を目指せ」などと言っているわけではない。やれることとやらないことをきちんと決めること、客として過剰なサービスレベルを期待しないこと。この2つを実践するだけで、「働き方が大きく変わる」ことを申し上げたいのだ。
さて、君たちはどうサボるのか? (筆者注:この原稿は手を抜いているわけではない)
常見陽平のプロフィール:
1974年生まれ。身長175センチ、体重85キロ。札幌市出身。一橋大学商学部卒。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。長時間の残業、休日出勤、接待、宴会芸、異動、出向、転勤、過労・メンヘルなど真性「社畜」経験の持ち主。「働き方」をテーマに執筆、研究に没頭中。著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』『エヴァンゲリオン化する社会』(ともに日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)『普通に働け』(イースト・プレス)など。
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