ファンケルの「アクティブシニア社員」は会社に何をもたらすのか?:いつまでも働き続けたい(1/4 ページ)
労働人口が減少する日本において、いち早くシニア世代が活躍する場所を作ろうとする企業が出てきている。化粧品と健康食品メーカーのファンケルでは65歳以上の社員が柔軟な勤務体系で働き続けられる「アクティブシニア社員」という制度を打ち出した。そこで活躍する社員に実際の話を聞いた。
「人生100年時代」「セカンドキャリア」といった言葉をビジネスシーンで見聞きする機会が増えている。定年退職後もすぐさま新しい仕事に就くなど、精力的に働くシニア世代が目立つようになってきたからだ。
労働人口が減少する日本において、彼らの活用は多くの企業にとって喫緊の課題であると同時に、事業成長のための大きなチャンスである。会社の将来を見据えていち早くシニア世代が活躍する場所を作ろうとする企業も出てきている。
化粧品と健康食品メーカーのファンケルもその1社だ。同社は65歳以上の社員が柔軟な勤務体系で働き続けられる「アクティブシニア社員」という雇用区分を設けている。社員の平均年齢は38歳と比較的若く、まだ対象者は少ないが、少子高齢化の進展に備えての施策だという。
世間では、定年後再雇用したシニア社員のモチベーションの維持や活躍の場の確保などで課題を抱える会社も多い。同社ではうまくいっているのだろうか。制度がスタートした2017年にアクティブシニア社員となった桧山(ひのきやま)正子さん(65歳)に聞いた。
創業間もないファンケルに入社。伸びていく会社で働くことが楽しかった
桧山さんがファンケルに中途採用で入社したのは、同社が創業して6年目の1985年。仕事を探しに行った公共職業安定所(ハローワーク)で、「化粧品会社があるんですけど、どうですか?」と勧められたのだそう。
今でこそ全国に200以上の直営店舗を展開する同社だが、最初は化粧品の通信販売の先駆けとして成長していった。顧客からの注文内容を入力するパンチャーとして入社した桧山さんは、「ちょうど会社が伸び始めるときに入社させてもらい、とても楽しく働くことができた」と当時を振り返る。
その後は物流部門などを経て、カスタマーサービスセンター 業務部 業務グループに配属。60歳定年の直前まで課長を務めた。同社では、定年後65歳まで嘱託社員として働ける制度があったため、60歳以降は課長職を他の社員に引き継ぎ、いちメンバーとして同じ部署で仕事を続けた。そして、「いよいよ会社を離れるとき」と考えていた65歳を目前にアクティブシニア社員の制度ができ、今も業務グループの一員として仕事をしている。
60歳定年で課長職を離れ、部下の仕事の大変さを知った
同社のアクティブシニア社員は、勤務日数や時間については会社が本人の希望を勘案して決定することとなっている。桧山さんは今のところ、週5日フルタイムで働いているので、65歳を境に大きく働き方や業務内容が変わったというわけではない。むしろ変化が大きかったのは、60歳定年を迎えたときだった。
「嘱託社員になるときに、課長職を離れてグループの一員として業務をすることになりました。そうすると、以前は他の人に指示していたことを自分が処理するようになって、『こんなに細かくて大変なことを、皆に要望していたんだな』と痛感しました。そういう実務は私にとっては新しいことなので、皆に教わりながらやりました。課長だったときは少し距離を置いていたパートさんとも親しくお付き合いするようになって、楽しく勤めさせてもらっていますよ」(桧山さん)
桧山さんの所属する部署は、顧客からハガキ、FAX、Webなどで届く注文のうち、記入間違いやデータの不備、特別な要望があるものなどについて個別に対応することがミッションだ。パートタイムで働く人も含めて10年、20年と勤続している人が多く、25人いるメンバーのうちの大半が40代、50代だという。そこに、最近はノウハウを継承するために若手も配属されるようになった。年齢の幅はあっても、和気あいあいとした雰囲気のようだ。65歳の誕生日にはパート社員と新入社員数人で祝ってくれ、桧山さんは「とても嬉しかった」と顔をほころばせる。
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