モンテローザに「パクリ疑惑」がかけられてしまう理由:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
モンテローザの新店舗「カミナリステーキ」の「パクリ疑惑」が話題になった。外食産業で「パクリ騒動」が後を絶たないのはなぜなのか。飲食業界の歴史を振り返ってみると……
「模倣し合って発展してきた」
先ほど紹介したパクリを巡るバトルのなかで、「鳥貴族」から提訴された「鳥二郎」が以下のような反論をしている。
答弁書では「飲食業界は模倣を前提に成り立っている。競合店が互いに模倣し合って外食産業は発展してきた」とし、業界で“パクリ”は常識だと主張。鳥貴族の社長が以前に経済誌のインタビューで、行きつけの飲食店が均一価格だったことをヒントに価格を「280円均一」にしたと明かしていたとし、「社長も模倣が起業のきっかけになったと認めている」と指摘した。(産経WEST 2015年6月16日)
これを聞いて、多くの人は「苦しい言い逃れ」だと感じるかもしれないが、歴史を振り返れば、確かに「280円均一」はうたうような業態は、170年ほど前から存在しており、極めてオーソドックスな居酒屋のモデルと言わざるを得ない。
つまり、「飲食業界は模倣を前提に成り立っている」というのはある意味で真実なのだ。
戦争に負けてしまったこともあって、われわれはどうしても「戦後」から物事を考えがちだ。焼け野原からの奇跡の復興を強調したいがために、さまざまなビジネスモデルが生まれたきっかけを高度経済成長期に結び付けるが、それは誤りだ。
実はわれわれの周囲にあるビジネスモデル、商習慣は戦前の明治・大正はもちろんのこと、そこに連なる江戸時代にフォーマットがつくられたものも多い。
例えば、先ほどの「三分亭」のような「ワンプライス商法」というのは、何もこの店が編み出した独創的なものではなく、この時代の商売人なら誰もが取り入れたトレンドだ。
文化年間(1804〜18年)には、道端に屋台を出して、食べ物を四文銭1枚で売るワンコイン屋台「四文屋」があったし、「十二文茶漬」もあちこちにあった。文化6年ごろには、三十八文均一で生活用品を売る店も繁盛したという。
お分かりだろう、いまや現代社会にあふれている100円ショップの原型だ。
テクノロジーの進化によって、流通や集客方法などの点は劇的な変化が訪れたが、客にモノを売ったり、客に飲食物を出すという業態の基本的な構造は江戸時代とそれほど大きく変わっていないのだ。
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