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提訴がダメなら「くら寿司」はどうすればよかったかスピン経済の歩き方(1/6 ページ)

ネット掲示板に「何が無添なのか書かれていない」などと書き込みをした人物の個人情報開示をめぐる訴訟に敗れた「くらコーポレション」に対して、厳しい言葉が投げかけられている。では、どうすればよかったのか。

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スピン経済の歩き方:

 日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。

 「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。

 そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」に迫っていきたい。


 ネット掲示板に「何が無添なのか書かれていない」「イカサマくさい」などと書き込みをした人物の個人情報開示をめぐる訴訟に敗れた「くらコーポレション」に対して、一部有識者やネットユーザーから厳しい言葉が投げかけられている。

「単なる一消費者の疑問にこの過剰反応はたまげた」(J-CASTニュース 4月17日)

「法廷闘争の逆効果」(東洋経済オンライン 4月18日)

「書き込みに目くじらを立てて提訴に踏み切ったのは悪手」(文春オンライン 4月21日)

 ただ、企業の報道対策を生業としている立場で言わせていただくと、「くらコーポレーション」がこのような「悪手」に走ってしまったのも、しょうがないことだと思っている。

 今回ネット上で書かれたことが、経営トップにとっては決して譲ることのできない「一線」を越えてしまったからだ。

 今から12年前、『週刊女性』が「不当表示追及! 一皿100円均一? ありえません」という記事を掲載した。ネット上ではもはや常識のように語られる回転寿司の代替ネタ、いわゆる「コピー魚」の問題を取り上げたものだが、どこか特定のチェーンを名指ししているわけではない。

 にもかかわらず、「くらコーポレーション」は損害賠償などを求めて提訴したのである。

 「代替ネタの商品はない。経営の効率化や仕入れルートの確保などの努力で採算ベースに乗せている」(朝日新聞 2005年5月10日)と主張したが今回同様、請求は棄却。裁判所は「くら寿司」のネタは本物だと認め、記事のどこにも「くら寿司」のことだと書いてませんから、となだめたのである。

 その後、怒りの収まらない同社が控訴をちらつかせたものの、『週刊女性』側からも「くら寿司を対象としたものではない」(朝日新聞 2006年9月27日)と確認したうえで和解となった。

 自社の名前が出てないような記事であってもこれだ。「イカサマ」呼ばわりされれば、どんなことになるのかは容易に想像できよう。


「くらコーポレション」に対して、一部有識者やネットユーザーから厳しい言葉が投げかけられている(写真はイメージです)
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