コンビニオーナー残酷物語 働き方改革のカギは「京都」にあり:24時間営業は止められる(3/5 ページ)
「働き方改革」の時流に逆らうかのように「24時間営業」を止めないコンビニ。その裏では、オーナーに「過労死ライン」の労働を強いている実態がある。そんな中、24時間を止めても純利益を8%増やした京都のオーナーが、メディアの取材に初めて実名で応じた。
限りなく労働者的な「経営者」
宮崎県で大手コンビニチェーンのフランチャイズ店オーナーをしているTさんは、父からコンビニ経営を引き継いだ。父が母とコンビニを始めたのは1996年のこと。ところが半年後、父は脳溢血で急死する。ほとんど寝ずに店を切り盛りした過労が父の命を縮めたと、Tさんは思っている。
雇われ店長なら、過労で亡くなれば過労死と認定され労災保険から補償がなされる。だがオーナー店長は、どんなに働いていても契約上は「経営者」。「労働者ではない」から過労死にもカウントされず、労災保険の対象にもならない。
冒頭でふれたファミレスや牛丼チェーンとコンビニには、1つの違いがある。24時間をやめたファミレスや牛丼チェーンの多くが直営店なのに対し、コンビニは大半がフランチャイズだということだ。
時間別収支を出すと、「深夜の時間帯」は赤字のお店が多いとみられる。来客が少ないのにスタッフの時給は上がるからだ。午後10時から午前5時まではそれ以外の時間の25%増しで、基本給が最低賃金に近くても、多くの地域で1000円にはなる。お店が直営なら、深夜の赤字は本部が被る。ところがフランチャイズでは、深夜が赤字でもそれを被るのは加盟店だ。深夜でも売り上げが上がる限り粗利が発生し、粗利分配方式を採るコンビニ・フランチャイズでは、深夜の粗利の半分以上を本部が吸い上げていく。いわば、本部と加盟店とで「損益分岐点売上高」が違うことが、コンビニ本部が24時間営業をやめようとしない一因と考える関係者は少なくない。
それに対しコンビニ本部は、「一部の店だけ24時間をやめるとお客さまが混乱する」とか、「数時間でも営業を止めれば、その前後も品薄になってトータルの売上が下がってしまう」「深夜は、納品受け入れや清掃に向いている」と24時間営業の利点を強調してきた。
実際はどうか。
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