コンビニオーナー残酷物語 働き方改革のカギは「京都」にあり:24時間営業は止められる(2/5 ページ)
「働き方改革」の時流に逆らうかのように「24時間営業」を止めないコンビニ。その裏では、オーナーに「過労死ライン」の労働を強いている実態がある。そんな中、24時間を止めても純利益を8%増やした京都のオーナーが、メディアの取材に初めて実名で応じた。
「深夜働けば自分のお金になりますよ」 過労死ラインの労働促すSV
なぜオーナーが、夜間12時間も店に立たなければならないのか。SVは「深夜にシフトに入って人件費を減らせば、ぜんぶ自分のお金になりますよ」と説明した。深夜にアルバイトを配置し時給1000円払えば6時間なら6000円。2人入れれば1万2000円になる。オーナー1人で頑張れば、その分が利益として残る、というのだ。
週休2日などほとんどのオーナーには夢のようだが、仮に週休2日(週5日労働)と考えても、1日12時間は4時間残業にあたるから、週の残業は4時間×5日=20時間。月80時間を超える残業となり、過労死ラインにあたる。夫が夜12時間、妻が昼12時間店に立てば完全なすれ違い生活で、家族の団らんもほとんどなくなる。そういう働き方を、SVはさも当たり前のようにアドバイスした。
店を回すためには仕方ない。Sさんは、夜12時間シフトに入っただけでなく、何だかんだで、毎日 20 時間ほど店に出た。
教員時代よりも長い労働の結果は、3〜4カ月で身体に現れる。10キロほど痩せて体調が悪くなり、お客さんからも顔色を心配される。ある日、近所に住む友人が店に来て、いかにも不健康なSさんに声を掛けた。
「お前、どうしたんだ?」
Sさんはそのとき、めまいがして倒れて病院に運ばれた。
うすうす、このままではいつか倒れると思い、身辺を整理していた。「精神的にも追い込まれ、下手したら自殺していたかもしれない」とSさんは振り返る。
悩まされる深夜の電話 「24時間はもう限界」
奈良県で、夫婦で大手コンビニのフランチャイズ加盟店を営むNさんは「家に帰って眠りについたとき、店から電話がかかってくることがある。それが一番キツい」と話す。
Nさんの店は、深夜勤務のアルバイトが辞めてしまい、午後10 時から午前1時まで入ってくれる人が1人だけ。夜間をオーナーである夫と彼女、そして息子で、何とか回している。
夫は毎日、午前1時から午前9時まで店に立つ。彼女も午前2時過ぎに店に出て、外が明るくなり始める午前5時過ぎまで働く。午前6時になるとパートさんが来てくれるので家に戻って仮眠を取り、家事を手早く済ませて、午後にはまた店に戻る。「24時間はもう限界」。それが偽らざる実感だ。
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