コンビニオーナー残酷物語 働き方改革のカギは「京都」にあり:24時間営業は止められる(5/5 ページ)
「働き方改革」の時流に逆らうかのように「24時間営業」を止めないコンビニ。その裏では、オーナーに「過労死ライン」の労働を強いている実態がある。そんな中、24時間を止めても純利益を8%増やした京都のオーナーが、メディアの取材に初めて実名で応じた。
ファミマ澤田社長「必要ないところはやめればいい」
ファミリーマートの澤田貴司社長は、先にふれた『日経ビジネス』特集で、「現場の負担が危機的なまでに高まっている」との認識を示し、立命館大学前店の試みを「実験」と位置付けた上で、「24時間営業についてはケース・バイ・ケースになるだろう。必要ないところはやめればいい」と言い切り注目を集めた。だが、今のところ、24時間営業をやめる店が広がってはいない。
「ファミマでは、24時間やると月10万円の補助が出る。バイトを使わず自分で入れば、その分、自分の“手取り”にオンされるんで、それが助かるというオーナーさんはいますね。ただ、時間を切り売りすることでどうなるか。数字をきちんと把握したほうがいい」
長谷川さんはそう話す。補助を加えても、深夜時間帯が赤字になっている店が多いのではないか、というのだ。立地によっては、深夜の売り上げが高い店もある。オーナーの考え方も十人十色だろう。それでも、24時間が「唯一の正解」でないことは、長谷川さんの店の1年間の「実験」(沢田社長)によって裏付けられた。7月1日からは、実験ではなく、通常営業として、19時間営業のお店になった。
「イートインや地産地消に力を入れ、学生や観光客にやさしい店づくりを目指しています。また、副業でネット通販も手掛け、人脈も広がりました」と話す長谷川さんは、「働き方改革」のモデルにも見える。ファミリーマート、そしてコンビニは、利用者のファミリーだけでなく、オーナーや従業員のファミリーにもやさしい業態に変われるか。24時間への固執をやめることは、その第一歩になるのかもしれない。
著者プロフィール
北健一(きた けんいち)
ジャーナリスト。1965年広島県生まれ。経済、労働、社会問題などを取材し、JAL「骨折フライト」、郵便局の「お立ち台」など、企業と働き手との接点で起きる事件を週刊誌、専門紙などでレポート。著書に『電通事件 なぜ死ぬまで働かなければならないか』(旬報社)、『その印鑑、押してはいけない!』(朝日新聞社)ほか、共著に『委託・請負で働く人のトラブル対処法』(東洋経済新報社)ほか。ルポ「海の学校」で第13回週刊金曜日ルポ大賞優秀賞を受賞。
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