100人超の社員と約280社を巻き込んだローソンの「発注改革大作戦」:30年ぶりの刷新(1/5 ページ)
ローソンが30年ぶりに発注システムを大きく変えた。夕方以降の品ぞろえを強化することと、店舗の在庫状況を見ながら柔軟に発注内容を調整できる仕組みを構築するのが目的だ。100人以上に及ぶ社員と280社近くが関わるプロジェクトはどのように進められたのだろうか。
コンビニで買い物をしていると店員が電子端末を操作して商品を発注する姿を見かけることがある。店舗からの発注をもとに、工場で弁当が製造されたり、メーカーの物流センターから商品が発送されたりする。発送された商品は物流センターに集められ、店舗ごとにピッキングしたのちトラックに積まれる。そして、最終的に各店舗に配送される――ここまではよく知られた話だろう。
実はローソンは30年近く続いてきた発注システムを大幅に刷新し、6月初旬から新体制に移行している。このプロジェクトは100人近い社員と約280社が関わる大掛かりなものだったが、実現までには多くの困難があった。
このプロジェクトを支えた、ローソンの経営戦略本部副本部長・次世代CVS統括部部長の秦野芳宏氏が舞台裏を明かした。
夕方以降の商品をどう増やすか
まず、刷新する前の発注システムがどのようなものだったかを解説しよう(本記事では、1日に3回納品される「3便エリア」のケースを中心に説明)。
店舗から発注するのは1日2回で、午前9時と午後2時にそれぞれ取りまとめを行う。午前9時締めの発注に基づいた商品は、当日の午後10時以降に納品される。一方、午後2時締めの発注に基づいた商品は、翌日の午前6時半以降と午後1時半以降にそれぞれ納品される。
これまで、コンビニにとっての稼ぎ時は通勤・通学前にあたる朝の時間帯と、昼休みの時間帯だった。従来の発注システムは、このピーク時に最も多くのおにぎりや弁当といった商品をそろえることを主眼として設計されていた。
しかし、消費者のライフスタイルが変化するに従い、発注から納品までの仕組みを変革する必要に迫られた。その背景について秦野氏が解説する。
「共働き家庭などが増えた結果、夕方以降に来店するお客さまに対して選択肢をどう増やすかが課題になっていました。午後4時以降にしっかりとした売り場をつくれば、お客さまに選んでいただけると考えました」
日本惣菜協会(東京都千代田区)によると、2017年における中食の市場規模は16年比2.2%増の10兆550億円となり、10兆円の大台を初めて突破した。業態別でみると、中食市場全体に占めるコンビニの割合は増え続けている。単身世帯や共働き世帯が増加することで、コンビニで弁当や総菜を買うようになったお客は増えているのだ。
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